裁判所は、記事の削除を拒否したウィキペディアが、信頼性のない情報を広めて大衆の混乱を引き起こす危険があるとして、500万ルーブル(約1200万円)の罰金を命じた。
ロシアのインターネット規制当局のロスコムナゾル(Roskomnadzor)は声明で、「我々は、問題のインターネットリソースの管理者に通知を送り、ロシアのユーザーに誤った情報を与えることを目的とした、ウクライナにおけるロシア軍の特別軍事作戦に関する不正確な情報を直ちに削除するよう求めた」と述べた。
当局が問題視している記事は、ロシアのウクライナ侵攻やその際の戦争犯罪、マリウポリの病院への砲撃、マリウポリの劇場への爆撃などとされている。
ウィキメディア財団の副顧問のスティーブン・ラポルトは、「この決定は、十分にソースがあり検証されたウィキペディア上の知識が、デマとみなされることを示している」と述べている。
コンテンツ削除の要求は3月1日に送られていた。ロシア政府は、ウィキペディアがロシア領内で運営されていることから、ロシアの管轄下にあると主張しているが、ウィキペディア財団は、ロシア政府がウィキペディアのグローバルな性質を理解していないと述べている。
ウィキペディアはまた、当該記事は誤報ではなく、削除の要求が人権侵害にあたると主張している。
ロシアは、国内のインターネットコンテンツの締め付けをますます厳しくしており、特に顕著な例としては、フェイスブックとインスタグラムが過激派に使われていると主張して禁止にしたことが挙げられる。
VPNレビューサイトTop10VPNによると、ロシアでは2月24日以降に1881のウェブサイトがブロックされており、そこにはツイッター、グーグルニュース、BBCニュース、Ukrayinska Pravdaなどが含まれている。
ロシア政府は、ロシアの戦争犯罪の主張は捏造であり、ウクライナでの行動は戦争ではなく「特別軍事作戦」だと反論している。政府はウィキペディアと争う構えで、この訴訟はウィキペディアの不利になると予想される。
「ロシア政府は、危機的状況にある人々に不可欠な情報をターゲットにしている。我々は、裁判所に再考を求め、人々の知る権利と表現の自由を尊重することを要求する」とウィキペディア財団のラポルトは述べている。