アップルの「ヘルスケア」は科学ととも進化する 幹部が語るWWDC発表の新機能

アップルのジェフ・ウィリアムズ氏


睡眠ステージもまた、アップルとブリガム・アンド・ウイメンズ病院、アメリカ心臓協会が連係する研究調査プロジェクトのApple Heart and Movement Studyに提供されるユーザーの睡眠記録のデータをベースに開発された機能だ。watchOS 9の提供開始後、睡眠ステージのデータもまだ次の機能の開発と潜在的な発見のため役立てられるだろう。

医学研究者や医師がiPhone、Apple Watchのユーザーから同意を得て、デバイスを使いながら日々計測する健康に関わるデータの提供を受けて研究のために役立てられる、ResearchKit、CareKitのようなフレームワークを確立していることもアップルの強みだ。

心臓の健康を見守る蓄積されるデータ


私たちの睡眠習慣には地域や文化の差も表れるはずだ。今は米国のみで実施されているResarchアプリによるヘルスケアデータの研究調査モデルを、今後より多くの国・地域のApple Watch、iPhoneのユーザーに門戸を開く形でデータの精度、および機能の使い勝手を高めることも必要ではないか。筆者の期待に対して、デサイ博士が次のように答えている。

「アップルは医学の発展に寄与するさまざまな研究調査との連携を意欲的に拡大しています。日本でも慶應義塾大学病院により、Apple Watchを利用した臨床研究Apple Watch Heart Studyが2021年に開始され、心房細動の研究や心電図アプリで測定する心電図の解析などに成果を挙げています。今後は米国以外にも全世界の研究開発者と連携しながら、より多くの人々に最適化したヘルスケアの機能を届けたいと考えます」

applewatch
心房細動と診断されたユーザーは、Apple Watchの心房細動履歴により、心拍リズムに心房細動の兆候が現れたおおよその頻度を確認したり、健康状態に影響を及ぼす生活習慣関連因子に関連する情報が得られる

watchOS 9のヘルスケアに関連する機能には「心房細動履歴」もある。心房細動と診断されたユーザーが、Apple Watchが計測する心拍の履歴を元に日々の健康を観察できる新しいツールだ。心房細動履歴は米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けた機能として、米国のApple Watchユーザーから提供を開始する。新機能に寄せる期待について、デサイ博士は次のように語っている。

「心房細動の継続時間が長くなると、うっ血性心不全などの健康リスクの高い合併症の発生を招く可能性があることも明らかになっています。アメリカ心臓協会もまた、生活習慣に関わる因子を対処することで心房細動の継続時間を短縮できる可能性について言及しています。ヘルスケアに心房細動履歴の機能が加われば、睡眠、アルコールの摂取や運動などの心房細動と結びつく生活習慣関連因子を未然に把握し、医療従事者とのコミュニケーションを深めながら対処を講じることも可能になります」
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文=山本敦

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