もうひとつはアップルがすべてのサービスの中核に置く、ユーザーの「プライバシー」を重んじる視点だ。
Apple Watchのユーザーは、おそらく誰もが自身の最もパーソナルな情報である健康に関連するデータをデバイスが取得し、数々の機能を提供するためにこれを活用していることを理解しているはずだ。そのうえで誰もが安心してデバイスを使い続ける理由は、アップルによる堅牢性の高いプライバシー保護の技術と、自らの意志により健康に関する情報を親しい家族などに共有できるユーザーインターフェースが厚い信頼を獲得しているからだ。
「ユーザーの健康に関わる重要なデータはメディカルIDを除いて、すべてデバイス上で暗号化されます。iCloudにバックアップされるヘルスケアの情報もまた、送受信中からサーバーに保存されている段階でも安全に保護されます。大切な情報を誰と、どのように共有するかについてはユーザー自身が決めることであり、アップルがその情報に触れることはない」とウィリアムズ氏は言い切る。
睡眠に関する未知の領域をテクノロジーと科学で解明
秋に正式リリースを予定するwatchOS 9とiOS 16のヘルスケアに関わる新機能に、ウィリアムズ氏が言及した科学的知見がどのように活かされているのか、デサイ博士に詳しい説明を聞いた。
アップルのサンバル・デサイ医学博士
先にウィリアムズ氏が言及した「睡眠ステージ」は、Apple Watchを装着しながら眠るユーザーの詳細な睡眠ステータスを記録する新機能だ。
デバイスの加速度センサーと心拍数センサーにより、レム睡眠/コア睡眠/深い睡眠の状態を把握しながらログを録る。睡眠ステージの経過をApple Watch単体で振り返ったり、iPhoneのヘルスケアアプリに蓄積されるデータに心拍数や呼吸数などの情報とクロスさせたハイライトも導き出せる。
「睡眠ステージは、これまでに最も多数・多様な被験者を対象とした睡眠ポリグラフ検査の臨床試験データに基づいて検証を繰り返し、設計された信頼性の高い機械学習のアルゴリズムにより計測されます」
Apple Watchの加速度センサー、心拍数センサーから集まる信号により、ユーザーの詳細な睡眠ステータスが計測できるようになる
デサイ博士は、人が「眠ること」についてまだ科学的に解明されていない領域が広く残されていると語る。米国ではiPhone、およびApple WatchのユーザーにResearchアプリを提供し、個人情報の提供について同意を得たユーザーがヘルスケアに関連するアプリやサービスの研究調査に協力できる環境が先に整っている。