衣服のリサイクルも、多くのファッションブランドが実践していて、実際その手の呼びかけは頻繁に目にする。しかし、自身がファッションを楽しもうとするときに、「環境負荷」だとか「サステナブル」だとか言われることに、「説教臭さ」のようなものを感じる人も、少なくはないのではないだろうか。
リサイクルのプロセスを可視化
そんななか、ファッションブランドのH&Mが仕掛けた「Looop」というキャンペーンは、一歩、進化したものだった。このキャンペーンは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つカンヌライオンズ2020~2021のデザイン部門で、グランプリを受賞した。
カンヌライオンズには多くの部門があり、SDGs部門などもあるのだが、このLooopがそうした部門ではなく、デザイン部門の最高賞を受賞したことにも注目したい。
現状、衣服の87%は、最終的に埋立地のゴミとなってしまっている。その状況を少しでも変えて、循環的なシステムにするべきだとH&Mは考えたのだ。そこで香港テクノロジーリサーチ研究所と協力して開発したのがLooopだ。
まずストックホルムのドロットニンガータンのリアル店舗に、古い衣服を新しい衣服に生まれ変わらせる場所を設置した。ぜひ、キャンペーンのビデオを観ていただきたいのだが、そこでは衣服リサイクルのプロセスの可視化が、徹底的に美しく、ファッショナブルに行われている。説教臭さは、みじんも感じられない。
ガラス張りのスペースのなかで古い衣服から糸が生成され、新しい衣服になって行く8つのプロセスが可視化されている。希望者は1000円~2000円ほどの料金を払えば、自らが持ち込んだ古い衣服から新しい衣服をつくることもできる。
その際、タブレットPCに自分の感覚で入力することで、色や形を選んでいける。8つのプロセスは、8つの大スクリーンに美しく表示される。また、メインのガラス張りの展示スペースだけではなく、店舗全体で、赤い糸を使用したインスタレーション展示もアーティスティックに行われている。
H&M「H&M Looop」|Cannes Lions 2021 より