森岡:このタイプ、女性用のバッグにはあまりないデザインですからね。服もそういう傾向にありますが、これはジェンダーレスの時代の象徴と言えます。男性でも女性でも、誰が使っても気になるデザイン。それがいま求められています。
小暮:大きなアタッシェケースは薄マチにデザインされているので、女性でも持ちやすい。最近、パソコンや資料収納用にブリーフケースをもつ女性が増えています。そういう女性に絶好なデザインですね。
森岡:「ディオール」のアイコンバッグである「サドル」は、その名の通り、馬のくらを連想させるデザインです。女性用のショルダータイプはビヨンセ、サラ・ジェシカ・パーカーなどが愛用し、女性の間で絶大な人気です。それを今回はメンズ用にボディバッグタイプに仕上げています。
小暮:ということは「サドル」は、ある意味、女性向けのバッグから影響を受けたメンズモデル。森岡さんのおっしゃる通り、いまはジェンダーレスの時代だから、メンズもウィメンズも、デザインは完全にクロスオーバーしているというわけですね。
森岡:メゾンが生み出してきたアーカイブはまさに財産。それを再解釈するだけでなく、メンズ、ウィメンズの垣根を越えて行える。これもブランドや商品で信頼を得てきたメゾンの強みではないでしょうか。
キャンバス素材はヨーロッパ産のコットンを使い、フランスの織機で織られたもので、軽くしなやか。つなぎ目の柄合わせも完璧で、メゾンの職人技が随所に感じられるコレクションだ。
写真右上から時計回りに「ディオールロック」のアタッシェケース(W21.5×H16.5×D5.5cm) 55万円、(W34×H25×D6cm)75万9000円、「ディオールランゴ」(W22×H12.5×D10.5cm) 26万4000円、「サドル」(W26×H19×D4.5cm) 39万6000円 (すべてディオール/クリスチャンディオール 0120-02-1947)
森岡 弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ、現在に至る。
小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。