鈴木俊一財務相は「急速な円安の進行が見られ、憂慮している」と述べたが、円売りの動きが加速しそうな状況にある。ウクライナ情勢も依然先行きが不透明のなか、企業経営者は相場をどのように見ているのか。また事業への影響は──
企業経営者たちに聞いた。
いまこそ出国税の増税を
WAmazing 代表取締役CEO 加藤史子
約20年ぶりの円安水準の今、訪日客は激増する。今こそ、出国税の増税の好機なのではないか。
出国税とは、国際観光旅客税のことである。19年1月7日、コロナ禍に日本が飲み込まれるちょうど1年前に出国税という新しい税として導入された。飛行機や船で日本を出国する人から1人あたり1000円を徴収するというもので、海外旅行に出かける日本人も訪日客も対象になる。
19年1月に導入された出国税は、19年度に500億円以上の歳入をもたらした。もし1人あたり3000円に出国税を増税すれば、19年水準でも1500億円の歳入になる。
一度、コロナ禍で忘れられかけたものの、これから中長期的に訪日外国人市場は大きな成長を見せると思う。その証左に政府は16年に立てた、30年に6000万人の外国人旅行者を迎え、国内消費額15兆円を目指すという目標を現在も降ろさず掲げている。
また先日、5月24日に世界経済フォーラム(WEF)が発表した2021年版の旅行・観光開発力の調査では、日本が初めて首位となった。
ここから再度、訪日客の増加が見込まれる。だから今こそ、増税のチャンスなのだ。
「正しい努力に、正しい対価」のスパイラル、今しかない
nobitel 代表取締役 最高経営責任者 黒川将大
金融相場が荒れているが、それは現実の社会情勢を表すものなので対応するしかない。世界株安は不安の表れ。こういった悪いときにチャンスになる事は多いと思う。
通貨安は反対の国は通貨高なので、長い間、円高に慣れているだけのことだと思う。ただ日本の構造上、落ち着いたら円高に向かうような気はしている。
このような状況下、弊社は仕入れがないので、問題は人件費高騰による値上げへの対応だ。こちらは他社も、海外は何度も値上げしてるのでついていくのみだ。日本よりやりやすい。
また、今後も、日本で生み出したものを海外で売るという、当たり前の事をするしかない。そんな中で、日本のモノやサービスが安く見える環境を理解して経営するということが重要。そして、仕入れなく外貨を稼いでいるので、海外事業を早期に軌道に乗せることがリスクヘッジにもなる。
そして、この円安環境で定期的な値上げサイクルと給料アップを図っていかないと日本の経済が値上げするきっかけがなくなると思う。デフレの元のような「安いものが良し」的な思想から、正しい努力に対し、正しい対価をつけていくというスパイラルをつくるには今しかない。