外国人人材、日本での労働価値低下
森興産 代表取締役 森隼人
現在の急激な円安は、インバウンドとしては追い風。しかしそれを支える外国人人材(通訳や翻訳家、ホテル事業者やドラッグストアなどで働く人材)にとっては、日本で働く価値が低下しています。
一年前と比べ、円の価値は約2割下落。影響は米ドルに対してだけでなく、東南アジア諸国の通貨に対しても及んでいます。過去1年間でのベトナムドンに対する円の下落幅は約17.5%。これは、日本で学び就労するベトナム人が、アルバイトや社員として働いて得た日本円での収入が母国通貨に対して17.5%目減りしていることを意味します。
ベトナム人に限らず、家族への仕送りや借金返済のために母国に送金する外国人にとっては、以前よりも送金金額を増やす必要があり、その分日本で使う生活費や貯蓄は減ります。
「事業は発展すれど、それを支える人材なし」という状況が今まさに起こっています。ホテル業界は、インバウンドの再来を見越してグローバル人材の大量採用に踏み出していますが、ここに応募する人が増えません。
良い“人財”確保のためには、外国人当人の現状を考慮し、諸手当や福利厚生の拡充による支援が必要です。
コストが増えた分は価格に転嫁すべき
木村石鹸 代表取締役社長 木村祥一郎
急激な円安、毎日のようにやってくる原料の値上げ案内は、私たちモノづくり企業の経営ジャッジを難しくさせています。
このような状況下で「値上げせず頑張る」というのは一見、消費者サイドに立ったスタンスのように見えますが、僕はそういった我慢比べをしてても、未来は明るくないと思ってます。努力でどうにもならないレベルのコスト増は、それを価格に転嫁していくべきです。
一方で、企業は価格を上げていくことに合わせて、社員の給与も上げていくべきでしょう。多くの企業がそういうスタンスでこの不透明な状況に立ち向かうことで、未来が切り開かれていくと信じてます。
まだ値上げの段階ではない
エディション・コウジ シモムラ(六本木のフレンチレストラン ) オーナーシェフ 下村浩司
日本は企業努力でお客さんのために値段を抑えますが、それによって内部の利益を減らしてきたわけです。円安が加速し、いずれ1ドル140円から150円台になっていくと考えていますが、これは政府や日銀のオペレーションでどうにかなる問題ではないかなと思います。こうした状況をみて、世界的に国力が下がっているんだということを国民が気づかなければいけない時がいよいよ来たなと。
ただ、今のところ私のレストランでは値段を上げていません。ようやくコロナが落ち着き、顧客が戻り始めてきてるんです。私達の顧客の方々は富裕層の方々が、多くいらっしゃいますので多少の値上げは問題ないかもしれません。上海出身の在日中国人の方も、うちのレストランの食後に「この料理のクオリティを考えると上海では2倍の値段しますよ」と言われてしまうのです。
それでもいまはレストランの価値を再認識してもらいたいと思っています。