ビジネス

2022.06.17

アジア系ビューティブランド発 「美しさの多様性」にZ世代が共感

Getty Images


ビーチカルチャーのステレオタイプからの脱却


もうひとつは、中国系アメリカ人Amy Liu氏が立ち上げたロサンゼルス発のクリーンコスメブランド「Tower28」だ。

LAのビーチカルチャーからインスパイアされたプロダクトを展開。ヴィーガン処方で、低刺激ながら発色が良いクリームチークやリップグロスが、Z世代を中心に人気を呼んでいる。

2019年のローンチ以降、美容系インフルエンサーや美容メディアからも絶大な支持を得て、大手コスメ専門店「セフォラ」でも人気を誇るコスメブランドに成長した。

「Tower28」のブランドストーリーで注目したいのは、これまで広告などで描かれてきたビーチカルチャーのステレオタイプからの脱却だ。ホームページを訪れると、多様な人種のモデルがビーチで楽しむ動画が流れる。

若いころからLAのビーチを訪れ、そのカルチャーに影響を受けていたLiu氏。米国の美容メディア『allure』の取材で、次のように話していた。

「誰もが自分の居場所を見つけられるブランドにすることで、レプリゼンテーション(多様性が適切に表現されている状態)を実現したい。多様なバックグラウンドの人がビーチを満喫するようなイメージです」

インスタグラムでも、異なる4人の女性を捉えた写真に、「あなたのお気に入りのアイテムをコメントに書いて、ここで新しい友達をつくろう!」とメッセージを添えた投稿がある。この投稿には、ファンからのコメントが90件以上寄せられている。



海を感じさせるフォトジェニックなパッケージに、サンタモニカの太陽をイメージしたキャッチーな製品のネーミング。そして、マルチカルチャル(多文化的)な友人とのライフスタイルをイメージさせるコミュニケーション。

ファウンダーのLiu氏が描く、インクルーシブなビーチカルチャーが反映されたブランディングは、「エモさ」を重視するZ世代の心を掴んでいるようだ。

日本へのリスペクトから生まれたブランド


おうち時間が増えたパンデミック以降、スキンケアを「自分と向き合うセルフケアの時間」として捉える流れが顕著になってきており、肌も心も整える丁寧な美容ルーティンや、内面からの多様な美しさを重視するスロービューティを謳ってきたアジア系美容ブランドの追い風となっている。

こうした背景から、近年は、スキンケアを通してアジアの美容文化を伝え、メンタルヘルスなどにアプローチするコミュニケーションが支持を得ているようだ。
次ページ > 米国での「J-Beauty」の火付け役

文=田辺敦子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事