さらに、米国のトレンドを牽引するZ世代が人種的に多様であることなどを背景に、最近は「人種間平等」や「女性のエンパワーメント」を含むダイバーシティ&インクルージョンに関しても、問題解決に挑むブランドが目立つようになってきた。
特に、COVID-19の影響でアジア系住民へのヘイトクライムなどが後を経たないアメリカでは、人種問題への意識の高まりから、AAPI(Asian Americans and Pacific Islanders=アジアンアメリカ人及び太平洋諸島民)のバックグラウンドを持つ美容ブランドのファウンダー達が、社会課題の解決について発信し注目を集めている。
社会的な責任や企業の存在意義が問われ、“パーパスブランディング”という言葉も叫ばれる中、どのようなアクションが顧客を惹きけるのだろうか。
今回は、アメリカで注目を集める「アジア系ファウンダー」の美容ブランドを中心に、その施策を紹介する。
「凝り固まった美しさへの憧れ」を断ち切る
クリーンビューティブランド「Cocokind」は、2015年に台湾系アメリカ人Priscilla Tsai氏が立ち上げた、「self-acceptance(自身を受け入れること)」を世界観としているブランド。
彼女が母から教わったアジアのスキンケアルーティンなどをインスピレーションとして商品を開発している。
Tsai氏は、公式サイトで「美容業界の現状を変え、『凝り固まった美しさへの憧れ』に囚われるサイクルを断ち切るために『Cocokind』を立ち上げた」と語り、一定の美の基準を訴求し、その基準からはずれていることは「美しさに欠ける」とコンプレックスを煽るようなマーケティングのあり方に疑問を投げかけている。
さまざまなバックグラウンドを持つ人たちを起用し健康的な美しさを讃えるインスタグラムのコミュニケーション、品質の高さを維持しながら「20ドル前後」という価格帯を守り続けている姿勢から、「すべての人に適切なスキンケアを届け、自分らしい美しさを楽しんでほしい」というインクルーシブな視点が伺える。
さらに、サスティナビリティを掲げるウェルネス業界の女性起業家に向けて助成金の提供を積極的に行い、「女性のエンパワーメント」や「雇用」などもサポート。こうしたブランドの姿勢に共感するファンが増え、インスタグラムは30万人以上ものフォロワーを誇り、今では大手スーパーマーケットのターゲットやホールフーズに商品が並ぶほどまでに成長した。