世界的サイバー法学者が語る「web3の前に考えたいWeb2.0の問題点」

サイバー法学が専門のハーバード大学ローレンス・レッシグ教授 Getty Images



「mRNAワクチン」の基盤技術を開発したカタリン・カリコ博士と、ビル・ゲイツ(左) Getty Images

井関:皮肉な話ですが、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツのように、是非に関係なく、政府には協調せざるを得ないと知ることもあるのではないでしょうか。反トラスト法違反訴訟での苦い経験からか、マイクロソフトは近年、米政府の動向を観察しながら適度な距離感を保っているように思えます。

レッシグ:ビル・ゲイツは世の中をより良くしようと投じている驚愕の寄付金もあって、世界的に尊ぶべき慈善事業家の一人になりました。驚くほど気前がよく、より良い世界を築こうとする彼の献身的な姿勢は比類なきものです。

それだけに、もっと力を入れてほしい領域もあります。私は以前、マイクロソフトが開発したOS(基本ソフト)のウインドウズを引き合いに、彼に「あなたがたは、ビジネスとしてOSをより効率化することに腐心している。それはなぜか。より優れたOSに進化させることで、より多くの優れたアプリケーションを開発するインセンティブが開発者に生まれるからではないか?」と話したことがあります。でも、“米政府のOS”を見る限り、彼は政府のシステムの効率化にはあまりお金をかけていません。つまり彼は肝心のOSが機能していない世界で、医療や教育に多大な寄付をしているわけです。

そこで、効率化するべくもう少しだけ政府にお金を回してくれれば、今ほど教育や医療に寄付金を投じずに済みますし、そのぶんをほかの慈善事業に回すことができます。もちろん、彼はその点は重々承知していると思いますが。とはいえ、アフリカ大陸からマラリアを撲滅したいという彼の意志も理解できます。

いずれにせよ、重要なのは、現代において政府が機能不全な社会で暮らすことは不可能であると、私たちが理解することです。とりわけ、中国のような戦略的な競争国が効率的な政府を作っているとあれば尚のことです。

文=井関 庸介

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