米国の銃乱射事件、今年すでに22件

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米国では5月以降、ニューヨーク州バファローのスーパーでの銃撃事件、テキサス州ユバルディの小学校で児童ら多数が犠牲になった銃乱射事件、オクラホマ州タルサの病院で医師らが銃を持った男に襲撃された事件が立て続けに発生し、今月9日にはメリーランド州スミスバーグでも工場の現場で銃撃事件があった。ただ、米国ではこれら国内外でトップニュースになった事件以外にも多くの乱射事件が起きており、その数からは米国で銃による暴力が蔓延している実態があらためて浮かびあがる。

一般に、メディアで大きくとりあげられる銃乱射事件は、公の場で単独犯が短時間に起こしたものが多い。マザー・ジョーンズ誌のデータベースには、こうした事件が5件記録されている。上記4件に加え、カリフォルニア州サクラメント近郊の教会で男が自分の子ども3人を含む4人を撃ち殺した事件だ。

一方、同誌が銃乱射(Mass shootings)の定義のひとつにしている「死者3人以上」という基準で、スタティスカが全米の銃犯罪データベース「Gun Violence Archive」のデータを調べたところ、銃乱射事件は今年すでに22件起きていた。死者は計111人にのぼっている。

ニュースをたんねんに追っている人ですら知らないかもしれないが、4月27日にはミシシッピ州ビロクシでも銃撃事件が起きている。地元メディアによるとホテルスタッフと客の口論が発端となり、犯人の男を含む5人が死亡した。また、2月5日にはテキサス州コーシカナで、男が家族7人を銃で撃ち5人を死亡させている。本人は自殺したという。この事件は、地元以外ではカナダと英国でしか報道されなかった。

マザー・ジョーンズのデータでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まった2020年には、単独犯による公の場での銃乱射事件は明らかに減っている。だが、銃乱射事件全体や銃撃による死者はそうではない。

Gun Violence Archiveのデータによれば、全米の銃乱射事件数は2020年も47件と例年並みで、2021年は77件(死者計306人)でピークをつけている。米疾病対策センター(CDC)によると、2020年の銃関連の死亡数は前年比35%急増しており、シンクタンクの刑事司法評議会(CCJ)によると、殺人件数も依然として高水準だった。殺人件数は2021年も同様の傾向だった。米国で殺人の約8割は銃によるものが占める。

銃乱射の定義で変わってくるが、米国では過去10年、銃乱射事件で年平均約55〜230人が死亡している。銃による暴力の犠牲者ははるかに多く、過去10年は年平均1万4500人ほどで推移し、2020年は2万人近くに達している。

編集=江戸伸禎

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