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2022.06.14 08:30

【対談】米山舞・PALOW. グローバルで評価される「コミックアート」の世界

田中友梨

──お二人は日本の「コミックアート」や「アニメアート」分野の第一人者とも言われています。海外からも注目されるこの分野を盛り上げていきたいという想いはありますか。

PALOW.:今は、絵を描きながら暮らしやすくなった(仕事になりやすくなった)時代だと思うんです。

インターネットの広まりとともに技術の共有がなされ、デジタルツールに関してはほぼ画一化しました。そして、SNSを通じて誰もが自分の作品を発表できるようになりましたよね。才能がある人はすぐに世に出ていくようにもなりました。

でも、誰もが参加できる「入口」はあるけれど、その表現が社会的な価値や意味を持つに至る「出口」の数が少ないんです。

2021年に米山さんが個展「EGO」で、新しい技術を使ってアナログ的なことを再現して展示するという取り組みをされました。アートシーンにおけるアートでもないし、コミックシーンにおける展示でもないし、どれでもないような作品で。

この“どれでもない”ってすごいことだなって思うんですよね。それは単に「米山さんの絵が良くて、それを飾りたい人が買う」というすごくシンプルなこと。このシンプルな状態はすごくいいなと思いました。



あとは、商業活動になると効率化されたフォーマットに対して絵をのせていくわけですが、もっといろいろな様式があってもいいなと思っています。

アートは「一点もの」だと思われがちですが、版画やフラットアートみたいな量産型アートもあっていい。今ない出口をたくさん見つけるためにも、海外にも日本にも目を向けています

米山:一言にイラストレーターといっても、挿絵を描く人、私たちのようなコミックアート、オタク文化のイラストなど様々あると思いますが、つくり手自身がフォーカスされる・憧れられる流れも増えているように思います。

現在でいうコミックイラストレーターやキャラクターデザイナーは、仕事の幅が決まってくるんですよね。例えば、広告やキャラクターデザインで言うと、なにかの知的財産やなにかのコンテンツのために、商業の仕事を描くことが花形とされている。

それはそうなんですが、オリジナルの世界観をきちんと自分たちで打ち出していく機会が少ない。それが展示会「SSS Re/arise」をやろうと思ったきっかけでもあります。

──展示会「SSS Re/arise」では、PALOW.さんがプロデューサー、米山舞さんがディレクターを務めていらっしゃいます。この展示会にはどのような思いを込めていますか。

PALOW.:今回の展示会をプロデュースしようと思った最大のきっかけは米山さんの個展「EGO」でした。

デジタルアートをUVプリント(紫外線ですぐに硬化する樹脂を使用する印刷技法)した作品を見て、「自分たちでもこの技術使えそう」「新しいツールを得た」と感じたんです。あの作品をみたイラストレーターは皆刺激を受けていたのではないかと思います。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=杉能信介

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