旅の概念が劇的に変化 いま「着地型観光」が人気のワケ

1200年以上前に朝廷に献上された歴史を持つ生産地でのお茶摘み体験

6月頭から、国は海外からの旅行者に(条件付きではあるが)門戸を開きはじめた。私の知人たちも海外との往来をはじめている。先日も、およそ2年半ぶりにポーランドに出張した岐阜県庁の職員によれば、出発前はコロナ禍に加えロシアによるウクライナ侵攻の影響も危惧していたが、実際はそれほど切迫した雰囲気はなく、現地でのマスク着用者もほぼ皆無、レストラン等での食事もまったく問題なくできたとのことだった。

日本は、まだまだ通常に戻ったわけではない。が、私が観光アドバイザーやプロデューサーとして携わっている岐阜県や兵庫県、山形県などの観光事業者や行政は、観光需要の再開の日のために、既にさまざまな取り組みをはじめている。

そのなかで、最近、私が特に注目しているのが、観光事業者、なかでも旅行企画や実施に携わる旅行会社の人たちの意識の変化だ。それは「地域へのまなざし」の変化と言ってもいい。つまり、このコロナ禍を通して、「地域資源を活かした観光資源(コンテンツ)の開発」という「着地型観光」に彼らの目が向き始めたということだ。

それは地方に本社がある旅行会社に顕著で、翻って言えば、そういった旅行会社こそがコロナ禍を経たこれからの観光を支える重要な役割となる可能性が出てきたということだ。それを最初に実感したのは、兵庫県の「神姫(しんき)バス」という、まもなく創業100年を迎える、県内を中心に路線バスや高速バス、貸切りバス、自治体のコミュニティバスの運行などを行う老舗企業だった。

兵庫での「地域資源の観光資源化」


私がこの会社を知ったのは4年前。兵庫県の観光を担う公益社団法人「ひょうご観光本部」が地域資源を観光資源化する事業者を公募した審査会のときだった。私はその審査員として、そしてこの事業に並走する観光プロデューサーとして審査会に立ち会った。しかし、その頃はまだ、審査会へ参加する企業の大多数が、自分たちの足下にある「地域資源の観光資源化(経済のまわる観光資源にするということ)」の意味を正しく理解できていなかったと記憶している。
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文=古田菜穂子 写真提供=丹波篠山観光協会

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地域と観光が面白くなる新局面

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