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2022.06.13 16:00

「IPO再開説」が立ち消え、中国アントの終わりなき苦境

THINK A / Shutterstock.com

中国の金融当局は先週、複数のメディアが報じたアント・グループのIPOを復活させるための動きを否定した。

ロイターとブルームバーグは6月9日、中国の金融規制当局が、アリババ傘下のフィンテック企業「アント・グループ」のIPO計画を復活させる可能性について初期段階の協議を開始したと報じた。しかし、その同じ日に中国証券監督管理委員会(CSRC)は、そのような検討や調査を行っていないと否定した。

ただし、CSRCは、政府の要件を満たすプラットフォーム企業の国外での上場を支援すると述べた。

アント側は、WeChatの公式アカウントを通じ、同社がIPOを実施する計画がなく、その代わりに「業務の是正作業を着実に進めることに専念している」と述べた。

IPOの再開の報道とその後の否定は、アントの約3分の1を所有するアリババのニューヨーク上場株の乱高下を引き起こした。同社の米国預託証券(ADR)は、IPOが復活するかもしれないという期待から時間外取引で7%上昇した後、9日に8.1%下落した。

アント・グループは、中国の当局から金融持株会社となり銀行の規制を遵守するよう指示された後、当面のところ、将来の成長に向けてアジアへの投資を活発化させている。同社は先日、シンガポールでデジタル銀行を立ち上げたが、その2カ月前にはシンガポールのフィンテック企業2C2Pの株式の過半数を取得していた。

アントの評価額は、かつて世界最大のIPOで350億ドル(約4.7兆円)の調達を目指していた当時に、3000億ドル以上とされたが、この計画が2020年末に中国当局によって突然つぶされた後、1700億ドルから1900億ドルのレンジに急落したと推定されている。

同社の大きな収益源だったマイクロレンディングや消費者金融事業は、中国の金融当局のリスク抑制とレバレッジ低減を目指す方針に阻まれている。アントは規制当局から、決済サービスという原点に立ち返り、融資や保険、資産管理といった多岐にわたるサービスを「是正」するよう求められている。

編集=上田裕資

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