政府による「骨太の方針 2022」に大麻に関する記述とは

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『霞ヶ関文学』における「等」の意味

ここで、もう一度「骨太の方針2022」に載った内容を見てみましょう。

「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。」

ここで注目したいのが「〜の利用等に向けた」の「等」という言葉です。

官僚が法案や公文書作成における文章表現において、別の意味に解釈できる余地を残したりする文章表現(作文技術)を、その特有性を表して「霞ヶ関文学」といいます。

つまりたった一文の文章であったとしても「利用等」の「等」には様々な意味が含まれ、これからいかようにも解釈を広げる余地が残されているということです。


霞ヶ関(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)

政府のフォローアップ資料(補足資料)にも記載


また、今回の骨太の方針の補完的な役割をするフォローアップ文にも以下が収載されています。

「諸外国における利活用の状況に鑑み、大麻を原料とする医薬品の国内での製造及び流通のために必要な規制を見直すとともに、大麻の濫用による保健衛生上の危害防止の観点から、使用規制の強化や検査体制の整備を検討し、2022年度中に結論を得る。」

こちらは補完的文章ということでより具体的な書き方で書かれている印象を受けます。

こちらでは主に医療大麻製剤についてと、いわゆる大麻使用罪について書かれていると考えられます。

「大麻を原料とする医薬品」と明記されたということはTHCも含めた製剤についても治験を適切に進めていけば認めていく方針と考えてよいでしょう。

そもそも今回の大麻取締法の骨子が医療大麻解禁とそれに伴う部位規制から成分の規制、そして使用罪の創設と言われています。

使用罪の創設については反対意見も少なくないですが、きちんとロジックが存在します。

原稿の大麻取締法では医薬品として大麻成分は使用できないことになっています。

これを変え、医療大麻を認めるためには、部位での規制から成分での規制をしなければなりません。また、成分規制をした場合、そのTHC量を上回るものについては規制が必要ですし、その着地として使用罪というのはロジックとしては認めざるをえないと思っています。

大前提として、国民の意識や厚労省の認識としては大麻草に対する忌避感があるはずなので、THC自体は規制しなければならないという空気感も影響はしているとは思います。

今後の見通し


また、上記の補足資料には「2022年度中に結論を得る。」とまで結論付けています。

厚生労働省の担当課である監視指導・麻薬対策課はこれまで、大麻取締法改正についてなんとか今年中に結論を出し、来年の通常国会での成立を目指すことについて言及はしていましたが、今回の骨太の方針に載ったことで、その現実味がかなり帯び、優先順位も厚労省内で上げざるを得なくなったものと思います。

前回の記事で骨太の方針の素案をCBD議連から内閣府に提出したことについて言及しましたが、内閣府からはなかなか収載はその時点においてはすでに大方が決まっており難しいかもしれないというコメントがありましたが、なんとかギリギリで文量は少なくとも掲載されたことは大変意義深いと思います。

戦後、GHQが主導して作られた大麻取締法は今まで大きな改正がなくここまできました。

新しい産業として麻文化が再度日本で興る可能性が今回の骨太の方針記載で実現に向けて動いていることがわかっていただけると思います。
引き続き注視していきたいと思います。

文=柴田耕佑

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