二酸化炭素からステーキ? 代替タンパク質、驚愕の最新事情

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「火山由来の真菌」からタンパク質生成?

始まりは2009年にさかのぼる。NASAが支援する研究プロジェクトに携わっていた科学者のマーク・コズバルが、イエローストーン国立公園の酸性火山性温泉で微生物(厳密には真菌)を発見した。ごくわずかな資源しかない極限環境でも、その菌は効率的に増殖できるのがわかった。

幸運にも、コズバルのチームは画期的な発酵技術によって、20種類のアミノ酸をすべて含む完全なタンパク源の生産に成功した。従来のタンパク質生産に必要だった土地と水に比べれば、はるかに少ない量を用いて。

月日は流れて現在、コズバルはジェフ・ベゾスやアル・ゴア、ビル・ゲイツらが支援する食品技術のスタートアップ企業「ネイチャーズ・ファインド」の最高科学責任者(CSO)兼共同創業者を務めている。ネイチャーズ・ファインドはバイオマス発酵技術を用いて、先に述べたイエローストーンの火山温泉由来の真菌「ファイ」を代替タンパク質の主原料に使用している。

ファイは塩味・辛味から甘味まで幅広いフレーバーに適応し、固形・液状・粉末状いずれの形にも応用でき、しかも栄養価が高い。ネイチャーズ・ファインドによると、ファイは9種類の必須アミノ酸を含む20種類のアミノ酸をすべて備えた、栄養豊富なヴィーガン向けタンパク源だという。タンパク質の割合は豆腐より50%多く、生のグリーンピースの倍ある。そのうえ食物繊維を豊富に含む一方で、コレステロールやトランス脂肪は一切含んでいない。


Getty Images(ネイチャーズ・ファインドの栄養豊富な真菌ベースの代替タンパク質「ファイ」は現在、朝食用ハンバーガー・パテやクリームチーズとして販売されている)

2019年に「火山タンパク質」が開発されたとき、CEO兼共同創設者のトーマス・ジョナスはこう断言した。「わが社は“バーガー相当”、すなわち7000エーカーの土地で放牧される牛からとれる肉と同量のタンパク質を供給する。本来それだけのタンパク質を生み出すにはそれなりの土地が必要だが、私たちは同じことをシカゴ市内で、ひとつの工場の中だけでやってみせる」

ネイチャーズ・ファインドはこれまでにオリジナルの朝食用ハンバーガー・パテ、メープル味の朝食用ハンバーガー・パテ、オリジナルのクリームチーズ、チャイブ&オニオンのクリームチーズを販売している。
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翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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