“企業が採りたい人材を採れない”時代。なかでも経営課題の解決を担うDX・コンサルティング領域の高度プロフェッショナル人材は不足する一方だ。実際に経済産業省のデータでも、IT関連の人材は不足の一途をたどることが予測されている。この状態では、全企業の99.7%を占める中小企業にハイエンド人材が回ってくることは、今後より困難になっていくだろう。
そこで立ち上がったのが、ハイエンド人材の代表格ともいえるコンサルタントの、4人に1人が登録するアクシスコンサルティングである。同社代表取締役社長山尾幸弘が提示するソリューションは、単なる人材紹介では収まりきらないプラスアルファの課題解決が実現できるという。
高度プロフェッショナル人材が不足し思うようにDXが進まない中小企業
──2002年にアクシスコンサルティングを起業された理由を教えてください。
1992年、国内系エグゼクティブサーチ会社へ入社し、製造業、サービス業など、さまざまな業界のエグゼクティブサーチを手がけてきました。そのなかで常に気にかかっていたのが、対価と成果のバランスが取れず社内失業者といわれる社員が多い企業がある一方で人材不足に陥っている企業も数多くあるという現実です。
そのような経験から、人材を適材適所に再配置することにより“人が活きる、人を活かす”世の中にしたいとの思いで設立したのがアクシスコンサルティングです。
2000年ごろから大手企業がERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画)システム導入による経営管理、業務プロセスの改革などを進め、コンサルティング業界のビジネスが拡大しました。アクシスコンサルティングの設立は業界拡大期と重なったこともあり、設立以来コンサルティング領域に強みをもっています。
──なぜ、アクシスコンサルティングにはコンサルタントを中心としたハイエンド人材が集まるのでしょうか。
弊社は人材紹介業から事業を開始していますが、転職を支援して関係性が終了するのではなく、転職後も中長期でお付き合いをしてきたからだと思います。過去に転職を支援した方はハイエンド層が中心ということもあり、現在では事業責任者、プロジェクト責任者などに昇格されているケースが多いです。
そうした方々からは、正社員採用の相談だけでなく、事業を推進するうえでのさまざまな課題について相談をいただきます。弊社は正社員のご紹介だけでなく、フリーコンサルによる課題解決プロジェクトの提案も可能ですので、まずは事業の課題を相談いただくというケースも多いですね。
長期にわたって登録者に寄り添い、キャリアだけでなくビジネスとしてもパートナーとしてもお付き合いさせていただいた結果、多様なハイエンド人材が集まったと言えるでしょう。そうしたところが、企業様から支持を受けている要因かもしれません。
──現在国内企業が直面している課題についてどのようにお考えですか。
国内総DX化ともいうべき急速な潮流ですね。大企業のDXは順調に推進しているケースもあります。しかし国内企業の99.7%を占める中堅・中小企業に関しては、思うようには進んでいないのが現状ですし、着手もできていない企業が多くあります。
なかでもDX推進のためのコンサルティング/マネジメント領域など、プロジェクトを推進するプロフェッショナル人材の不足は深刻です。DX推進は待ったなしの状況でありながら、人材不足で推進できない企業が多すぎるのです。そこを解決しなければ、日本企業ひいては日本経済自体が成り立たなくなってしまうと危惧しています。
BtoB、BtoCでなくBtoP(パーソン)へ
──御社は「あらゆる課題は、人で解決する。」をコーポレートスローガンに、自社を「課題解決と価値創造のパートナー」と定義しています。日本経済の危機をどのように回避できるとお考えですか。
一般的に企業では、BtoBやBtoCの関係性を大切にしていると思います。しかし私たちはBtoP(パーソン)を大切にすることにより課題解決を推進しようとしているのです。つまり企業とハイエンド人材をつなぐことで企業の経営・事業課題の解決を図っていこうとしています。
個人の働き方も、“就社”から“就職”の時代へ変化してきました。今後は“就ミッション”というかたちで、複数の企業で活躍する兼業、会社に属しながら副業をする人が増え、正社員の比率が下がっていく時代になると考えています。
コンサルティング業界も例外ではなくこの流れになってきています。大手中心に副業を解禁するコンサルティング会社が増えています。私たちはフリーコンサル事業でハイエンド人材のスキルシェアリング(兼業)を推進していますが、今後はコンサルタントの副業を支援する仕組みも強化していく予定です。
コロナ禍をきっかけとするリモートワークの普及が加速したこともあり、地方の中小企業がフリーランスや副業のコンサルタントを柔軟に、リーズナブルに活用することができる時代になりました。
創業以来、コンサルティング会社様へ正社員を紹介することにより、間接的に大手企業の課題解決を支援してきました。今後もコンサルティング会社への正社員紹介は強化していきます。
一方で中小企業にとってハイエンド層の正社員を増やすのは冒険です。必要なときにスポットで活用できる仕組みを整えていくことが、今後の日本の産業・企業にとって重要と考えており、アクシスコンサルティングが強化していく領域になります。
──現時点で御社が展開する、3つのサービスについて解説いただけますか。
コンサルファーム向け人材紹介事業
現役コンサルタントの4人に1人が登録する国内最大級のコンサルタント採用・転職支援サービスです。特にマネジャー以上の即戦力層の採用・転職支援に強みをもっています。
事業会社向け人材紹介事業
グループ会社であり60年の歴史をもつケンブリッジ・リサーチ研究所(CRI)によるCxO等の経営層やDigital・DX人材などのハイエンド人材の採用・転職支援サービスになります。弊社との連携で、コンサルタントの事業会社向けへの転身支援、業界、業種の枠を超えたハイエンド人材を紹介することが可能です。
案件ベースのフリーコンサル事業
独立してフリーランスとなったコンサルタントによる経営・事業課題解決支援を行います。フリーランス活用で、よりリーズナブルなプロジェクト推進を可能にします。またコンサルタントの独立支援も行っており、スキルシェアリングを推進しています。
──最後に、将来の展望をお聞かせください。
人材紹介事業で始まった弊社は、フリーコンサル事業による経営・事業課題解決プロジェクトなど事業を多角化してきました。人材を資源(Human Resources)よりも資本(Human Capital)ととらえる時代に変化しており、ハイエンド層のスキルシェアリングの推進含め私たちが日本の産業発展に貢献できることはまだまだあると考えています。今後に期待してほしいですね。
やまお・ゆきひろ◎1962年、東京都生まれ。大手食品メーカーにて営業・マーケティング業務を担当。92年国内系エグゼクティブサーチ会社へ入社。同社取締役を経て、2002年アクシスコンサルティングを設立、代表取締役社長に就任。