BTSの「黒髪」なぜ。バイデン大統領への最高の敬意?

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つまり、彼らの発言に一層の重みと厚みが加わり、話の説得力が増す効果がある。その清廉なさまと、目の前の事に向き合う揺るがない意志を、静かな迫力をもって相手に伝えることもできる。また、それぞれが違うカラフルな髪色で存在するよりも、メンバー全員が揃ってダークヘアであることにより、意識と姿勢、力の集約を示すことになる。「団結」をも感じさせることができるのだ。
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さらに、ホワイトハウスの周囲の緑を背景にバイデン大統領に向かって歩いていく姿や、オーバルオフィスの中での会談の様子を見ると、白髪に明るいスキントーン、青系のスーツにタイと、プレゼンスに「色」が存在するバイデン大統領に対する尊重も踏まえているのがわかる。


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余計な色やそこから連想させる意味を完全に排除し、シンプルな上質感と清潔感を最高潮に高めた、色味を感じさせないダークスーツに身を包んだ彼らは、会う人と背景に自分たちのスタイルを最適化させていた。目立てばいいというものではない、そして謙遜しすぎる必要もないのだ。

何事もなく「目的」を果たすために


そしてもうひとつの理由、筆者が最も重要な理由であると考えたのが、「ヘイトを促す可能性のあるノイズを、自分たちから発しないため」である。
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今回の舞台はホワイトハウスで、パフォーマンスをするステージではない。彼らがそこを訪問する目的は、歌を歌うことでもダンスをすることでもない。望んでもなかなか会うことは叶わない米大統領と対面することである。その後のメディアや社会の反響をかんがみて、槍玉にあげられる可能性のある事柄を、あらかじめ避けたと推測する。

アンチが見ていることも覚悟した上で、より多くの人に正しくメッセージを伝えるための最も良い方法が、「削ぎ落とすこと」「ノイズをなくすこと」「自分達の存在のアウトラインを明確にすること」だったのだろう。

有名になればなるほど、見ず知らずの人から言われのない悪意を向けられる。覚悟があってもどんなに場数を踏んでも、心地よいものではないし、どんな人でも精神的ダメージを受ける。何より「米大統領との対面」と、その先にある「社会に向けたメッセージ発信や活動」という本来の目的を阻害することにもなる。

彼らの姿勢を見ていて受ける印象は、パーパス・オリエンテッド(目的志向)だということ。「目的のためならなんでもする」という荒々しい姿勢ではなく、目的を果たすためには余計な戦いをせず、素早く判断し行動に移すというものだ。

一人ひとりが「差別」という大きな問題を痛いほど知っているからこその、身の保ち方であり守り方、そして攻め方なのだと思う。そこに不可欠なのは、オーセンティシティ(本当であること)と、シビリティ(礼儀正しさ)である。

大統領への「敬意」を示しつつ、「対面」という目的、そしてそれを通した世界への情報発信を果たすにはどうするか。それを考えての判断だったように思えてならない。余計な枝葉を省き、プレゼンスのアウトラインを明確にすると同時に、余計なことを言われない状況をしっかり準備した、BTSの静かで骨太なプレゼンスに、凄みさえ感じる。
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文=日野江都子

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