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2022.06.07 11:30

イーロン・マスクの出社命令メール、過労促進の問題も

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)(Photo by Raymond Hall / Getty Images)

米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、先週流出した社内メールで「リモートの偽オフィス」を批判して幹部にオフィス勤務復帰を要求していたことが明らかになり、さらにそれを受けたツイートで、遠隔勤務の希望者は他の会社で「働くふりをすべき」と述べて、物議を醸した。だがそうした中であまり注目されなかったのが、マスクは幹部の勤務場所だけでなく、労働時間に関する義務も明示していたことだ。

マスクはあるメールの冒頭で、遠隔勤務の希望者は「最低でも」週40時間オフィス勤務する必要があるとし、「さもなければテスラを退社するように」と言い放った。さらに続くメールで、「自分があれほど工場で寝泊まりしていた理由」を説明し、遠隔勤務は「手抜き」だと示唆した。

働き方に関する専門家によれば、現代の労働者は働く場所の柔軟性のみならず、労働時間の自由も求めている。上司から信頼され、仕事にかかった時間ではなく成果を基に評価されたいと考えているのだ。

スラックなどが立ち上げた仕事の未来に関する研究コンソーシアム「フューチャー・フォーラム」が4月に発表した報告書では、日本や欧米の知識労働者を対象としたアンケート調査の結果として、79%が勤務場所の柔軟性を、94%が勤務時間の自由を求めていることが示された。

企業に対して就業規則を巡る支援サービスを提供するフレックス・プラス・ストラテジー・グループ(Flex+Strategy Group)の創業者カリ・ウィリアムズは「人々は、場所と時間の柔軟性を求めている」と説明。燃え尽き症候群や心の健康の問題が増える中、週40時間以上の勤務を期待していることを示唆することは「現実に対して無神経」であると受け止められる可能性があると語った。

欧州経営大学院(INSEAD)で職場のリーダーシップと学びを研究するジャンピエロ・ペトリリエリ教授は「これは彼の性格と非常に一致している」とし、「彼は過労文化の象徴で、人々に対し完全なコミットメントを求めている」と指摘した。
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編集=遠藤宗生

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