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2022.06.07 09:30

遠隔メンタルヘルス診療のCerebralが人員削減計画 違法処方疑惑とは「無関係」

Getty Images

オンラインのメンタルヘルスサービスを手がける米スタートアップ、セレブラル(Cerebral)で混乱が続いている。同社は先月、規制薬物の処方に関する法律に違反した疑いで当局の調査が入り、最高経営責任者(CEO)は辞任。その後、一部従業員のレイオフ(一時解雇)を打ち出したが、新CEOは先週、レイオフは「マクロ経済」要因が理由だと従業員側に説明し、法令違反をめぐる問題と切り離した。ただ、従業員らの納得は得られていないもようだ。

「会社は好調だが、いまは景気悪化の渦中にあり、どの企業も慎重にならざるを得なくなっている」。先月、最高医療責任者(CMO)からCEOに昇格したデービッド・モウは3日、従業員との集会でそう語った。そのうえで「わたしたちは持続可能な仕方で成長できるようになりたいし、会社を従業員や顧客のために会社を安定させたい。こうした理由から、向こう数週間で事業再編に関して難しい決断をせざるを得ない」と説明した。

同社は先月、興奮剤や鎮静剤など、乱用や依存のおそれがある薬物の処方を規制する「規制物質法(CSA)」に違反した疑いがあるとして、ニューヨーク州東部地区連邦地検から召喚状を受け取っていた。セレブラルの広報担当者は当時、「司法省の調査に引き続き協力する」とだけコメントしている。

ただ、モウはこの席で、計画しているレイオフに関して、規制薬物にかかわる部門はもともと会社の事業全体のごく一部にすぎなかったと述べ、この部門は「無関係」だとした。削減対象となるポストについては、まだ最終的な決定はしていないとしながらも、患者に直接対応する臨床医は除外されると説明した。

この件について最初に報じたブルームバーグなどの報道によると、レイオフは本社で働く従業員を対象に7月1日までに通知される見通しとなっている。

セレブラルは、先月辞任したカイル・ロバートソンらが2019年にサンフランシスコで創業。昨年はソフトバンクグループの「ビジョン・ファンド2」主導の資金調達ラウンドで3億ドル(約390億円)を調達し、48億ドルの評価額を得ている。

セレブラルは先月、新規患者への規制薬物の処方を取りやめる方針を明らかにしているが、理由については、規制薬物の処方に際し原則少なくとも1回の対面診療を義務づけた法律の適用除外が近く失効するとみられるためと説明している。この規定は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)への対応策の一環で停止され、セレブラルなどはオンライン診療だけでこうした薬を新規患者に処方できるようになっていた。

フォーブスはセレブラルに対して、一部部門の閉鎖とレイオフ計画がなぜ無関係と言えるかを尋ねたが、回答は得られなかった。広報担当者は「当社は組織の簡素化や中核事業への再投資、品質の向上、事業モデルの調整に向けて、組織の見直しを進めているところだ。これらを通じて、患者のメンタルヘルスニーズにもっともうまく応えられるようにしていきたい」と述べている。

セレブラルは、ADHD(注意欠陥多動性障害)薬の処方手順など、不正な企業慣行を告発したことに対する報復で解雇されたとして、元幹部から訴訟も起こされている。セレブラル側は「根拠のない誤った主張」だとして断固争う姿勢を示している。

編集=江戸伸禎

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