ビジネス

2022.06.07

「日本一働きがいのある会社にしたい!」NECの若手リーダーと組織開発プロの挑戦

合同会社こっから代表社員・黒川公晴(左)、NEC主席ビジネスプロデューサー・岩田太地(右)(写真=小田駿一)


リーダー自身が「己を知る」コーチング


黒川:岩田さんは立場的にも能力的にも自分でなんでもできる人なので、最初は勝手に、「やるべきことはひとりでもやっていきます」という印象を抱いていました。しかし、一日かけてコーチングをどっぷり対話していると出てくる、大事にしている価値観のキーワードが、「遊び」「fun」「仲間」「一緒に作る」とかだった。意外、というか新鮮でした。

岩田:コーチングを受けて、自身の根源的な価値観として「厳しさの中に楽しさを見出す」というのがあるな、ということに気づきました。仏教系の中高一貫校出身で、そこで学んだことです。単なるfunではなくて厳しさを仲間で越える楽しみを求めているのは、中高の影響が原点としてあるのだと思います。こういった本心通りの印象ではないようで、フィードバックでも、感情が出ていない、とか付き合いの短い人ほど必ず言われるので、注意するようにはしている。付き合いが長くなるとわかってくれるんですが。

黒川:自覚的になれるといいですよね、という話をしました。無自覚でいると、いろんな外部刺激に反射的に動いてしまう。本当は自分が大事にしたいことがあるのに、真逆の行動をとっていることに気づかないことがある。そこは一度立ち止まって、「無意識的にこんなことをやっていたんだ」ときちんと自分で受け取る、というのを2回目以降やっていきました。すごく忙しいのに、真摯に向き合ってくれた。

岩田さんの現在の挑戦と課題は?


岩田:私はいま、オフィシャルな組織は持っていない。直属の部下はいないんです。NECはそういうのもオフィシャルになりました。アジャイルにプロジェクト型でチームをリードすることも公式な組織運営のありかたです。私の現在の役割と課題は、より多くの人に、普段見えていない視線を持ってもらい、より良い変革につなげ会社を変化にあわせて強くしていくこと。社内外問わず、従来のピラミッド組織的な考え方から離れた発想をしてもらい、良い影響を広げていくことです。

変革はやらなくてはならない、しかも早く。トップ・ダウンとコマンド・コントロール型のパワーインフルエンスだけではなくて、外部からの刺激をつくり、みんなで学び合いながら、正しい課題を設定し対応しながら共有した方向に進んでいくために、いかにマインドや行動様式を変えていけるか、が挑戦です。また、私が影響力を行使していることを自覚し、私自身が「何が良い、悪い」といったバイアスや変なこだわりを持たずにやっていくことがより大きな挑戦であり課題だと思っています。

黒川:よくエグゼクティブの方と話をしていて、伸ばした方が良いなと思うスキルは、「アンラーンできるスキル」です。「リスキリング」「アップスキリング」と言われますが、全部スキルを「追加」していく概念ですよね。そうではなくて、新しいものを取り入れる際に邪魔になる自分の古い考えやものの見方をいかに手放していくか。取り組む人や事業も前提条件が変わっているなかで、どれだけそれを解体して、手放せるのか、は非常に重要になってきていると思います。

イノベーションを起こすために必要な「認知的多様性」という言葉がありますが、平たくいうと、さまざまな専門知識やいろんな考え方を持った人たちが「いる」ことを理解できるかどうか。そこでイノベーションは起きる、ということです。そのことを意識して、皆さん採用や人材配置を頑張るのですが、なぜか多様な人材を採っても同質化する、という現象が往々にして起こっているんです。

そこでよくあることは、支配的なリーダーがいて、皆がそこに合わせにいっている、ということです。この部分を、いかに共感的なインタラクションで緩めていって、本来あるはずの多様性を表出させる土壌をつくることができるか。率先してリーダーが古い価値観を手放していくことが重要なんです。

岩田:「アンラーン」という言葉もよく使うけれど、日本語にしづらいですよね。「学び直し」は追加の概念になりますし。先日、海外のベンチャーキャピタリストと話していて知ったのですが、彼らはバイアスを持って投資してはいけないから、すごく意識的にバイアスを外すことをしていた。いろんなフレームワークを当てはめて、自分がどんなバイアスを持っているかを分かった上で意思決定をしている。突き詰めていくと最終的には「解脱」を目指すことになっちゃいますよね。

でも、そこまで徹底的にやらなくても、自分のバイアスは捨てにくいから、異なる考え方を持った人の意見をもらうようにしよう、ということをいま私はやろうとしています。多分、いろんな人のやり方があると思います。

黒川:やはり、最前線の現場でやっている人が、人材をきちんとつくる、ということを訴えている点が、とても力強いと思います。
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文=岩坪文子

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