「失敗を仲間の役に立ててくれ」
だが幸いなことに、アマゾンの長期的思考へのこだわりには人材への投資という側面もあった。新しい何かに挑戦し、構築するには失敗がつきものという考えが確立していたのだ。失敗した社員を解雇したら、その経験によって得た学習の成果を捨てることになる。
ジェフはよく、大失敗したリーダーにこんなことを言った。
「いまクビにするわけがないだろ。きみには大金を投資したんだ。きみにはこれから成果をあげる義務がある。何がいけなかったのか突き止めて、わかりやすく文書にまとめてくれ。学んだことを社内のすべてのリーダーと共有するんだ。同じ間違いを繰り返さず、ほかのリーダーたちが同じ間違いを犯すことがないようにしてくれ」
私はアンボックスの失敗から多くを学び、アマゾンのほかの社員たちと知識を共有した。その知識は私の糧となり、あのひどい自己評価以降、新たなプロダクトや機能に携わるたびに、正しい考え方に導いてくれた。
『アマゾンの最強の働き方』2022年、ダイヤモンド社刊、コリン・ブライアー/ビル・カー著、紣川謙 監修、須川綾子訳