失敗者を奮起させた、ジェフ・ベゾスの「すごい一言」

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ほかの企業なら退職しか道はなかったかもしれない──。

アマゾン・アンボックス失敗時の状況について、「ジェフの影」と呼ばれるCEO付きの参謀を務めたコリン・ブライアーと、バイスプレジデント、ディレクター等を長年担ったビル・カーによる話題作『アマゾンの最強の働き方』にはこう記されている。

そんな大失敗したリーダーに、ジェフ・ベゾスがよく掛けた言葉がある。ダイヤモンド・オンラインの記事から抜粋して紹介する。


ジェフ・ベゾスの失望


アマゾン・アンボックス(アマゾンが試みた動画ダウンロードサービス)の公開から数日後、スティーブ・ケッセルと私、それにニール・ローズマンがジェフのオフィスに呼ばれた。ジェフは私たちが顧客体験の質を十分高く設定していなかったことに失望し、顧客の期待を裏切ったことに苛立っていた。

いまにして思えば、何がいけなかったのか理解するのは簡単だ。アンボックスは準備が整っていないのに、公開を急ぎすぎたのだ。

サービス開始の数週間前、ハリウッドとマスコミのあいだでは、アップルが近々デジタルビデオサービスを開始するという噂が流れていた。先を越されたくないと思うあまり、私たちはアンボックスのサービス開始に血眼になった。これは競争相手ではなく顧客最優先で考えるという理念に反するものだった。

社内で社員限定のベータテストは行っていたが、その結果を活かすことができなかった。その結果を踏まえ、開発速度を落としてでもフィードバックを慎重に検討し、顧客体験の質を改善するための本格的変更を行うべきだったのに、それを怠った。

サービスを開始することだけに集中していた。顧客体験よりも、スピードとメディアへの売り込み、それに競合への執着を優先させていたのである。どこから見てもアマゾンらしくないやり方だ。

大失敗時の業績評価シート


以下は、アンボックスを発表した年の業績評価シートに書いた私の自己評価である。

総括すると、2006年の私のパフォーマンスは最低だった。アンボックスは発表当初から不評。原因としては、DRM(デジタル著作権管理)の不具合、コンテンツの使用に制限がかかるライセンス契約上の問題、作品のラインナップ、プロダクトの選択ミス(ダウンロード速度に対して画質を重視しすぎた判断の誤り)、技術的な不具合などがあった。いずれについても、これらの問題を適切に管理できず、結果として説得力に欠けるサービス開始となった。消費者の反応は鈍く、メディアの反応も否定的なものとなった。

与えられた目標に対し、現時点のプロジェクトの達成度は不十分であり、完了した主要なプロジェクト(アンボックス・ビデオ)も(現時点では)魅力的な顧客体験を提供するに至っておらず、売上も芳しくない。私の総合的業績評価は「D」でも寛大だと考える。

読み返すと胸が痛む。アマゾンの行動規範「信頼を獲得する」の「間違いは素直に認める」という部分を外していないのが、せめてもの慰めだ。ほかの企業なら退職しか道はなかったかもしれない。
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