ジェフ・ベゾスが部下に繰り返し放った「過酷な一言」

Photo by Olly Curtis/Future Publishing

有意義かつ参考になるモックアップを用意するには、そのサービスに含まれるあらゆる要素について、顧客がどんな体験をするのか、また各機能が画面上でどのように動作するのか、徹底的に考え抜かなければならない。ビジネスの全体を構想するだけでも大変な仕事だが、それを視覚的に表現して洗練させていくには、さらに多くの労力を要する。

私たちはモックアップを用意していなかった。

デジタルメディアに大きなチャンスがあることをジェフに伝え、予算を組み、担当チームを編成する承認を得ようとしただけなのだ。顧客体験などの詳細は、ゴーサインが出てから詰めていくつもりだった。

しかし、ジェフにモックアップを見せろと言われたら、何がなんでもつくるしかない。

「見切り発車」で成功するほど甘くない


数週間後、大まかなモックアップができた。

ジェフは私たちの話をじっくり聞いてから、あらゆるボタン、テキスト、リンク、色調について、細かく質問した。

音楽サービスについては、iTunesよりもすぐれている点は何かと訊いた。電子書籍については、1冊の価格はいくらか、顧客は電子書籍をパソコンだけでなくタブレットやスマートフォンでも読むことができるのか知りたがった。

私たちは、前回と同じようにこう答えるほかなかった。そこまでは考えきれていません!

チームに必要な人材を採用し、コンテンツ企業と交渉を始め、どうにかスタートを切るため、まずは基本的な承認をしてほしかった。

しかし、そんなことでは到底ジェフを納得させることはできなかった。彼は、私たちが一体何をつくろうとしているのか、それは競合商品よりも顧客にとって魅力的なものなのか、詳細に知りたがった。チームを編成したり、仕入先との関係を構築したり、何かに着手する前に、細部まで合意できていなければならないというのだ。

中途半端なモックアップなら、ないほうがましだった。ジェフにとって、中途半端なモックアップは中途半端にしか考えていない証拠なのだ。彼は即座に、いつもの大変厳しい口調で、自分の思うところを遠慮なく指摘した。

ジェフは、たまたま最初に目に入った道を進んでいけば成功できるほど世の中は甘くない、と私たちに思い知らせたかったのだ。私たちは改めて計画の細部に至るまで、徹底的に考え抜く必要に迫られた。

『アマゾンの最強の働き方──Working Backwards』 コリン・ブライアー、ビル・カー著、紣川謙監訳、須川綾子訳、ダイヤモンド社

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