もちろん参加者全員が同じ文書を読むが、ジェフ・ベゾスは「だれも思いつかないようなことをいつも指摘した」。
そして、『アマゾンの最強の働き方』の著者の一人、「ジェフの影」と呼ばれるCEO付きの参謀を務めたコリン・ブライアーは本人に訊ねたという。「なぜそんなことができるのか?」
ベゾスの答えとは──?
提案への「意見」は極めて重要
会議参加者にとって、有意義なフィードバックやインサイトを伝えることは、提案文書を準備するのと同じくらい難しい。
私(コリン)がアマゾン在籍中にもらった最高の宝物は2本のペンである。
私が述べた意見に対し、提案チームから贈られたプレゼントだ(会議終了後、私はたいてい提案者にメモを書き込んだ説明文を手渡していた)。いずれのケースも、私のコメントが事業を成功に導く鍵になったと言ってくれた。
こんなことを書くのは自分の貢献を自慢したいからではない。読み手が書き手と同じくらい真剣に向き合って意見を述べれば、現実的で長期的な影響を与えることができるという実例を示したいからだ。それは単なる感想ではない。アイデアを具現化する手助けをする、つまり事業を推進するチームの重要な一員になるということだ。
すぐれた「6ページ資料」がどのようなものであるか、アマゾニアンはすでによく知っている(6ページ資料とは、アマゾンの会議などで使われている独自の資料の形式。詳細は本書を参照)。
どんな内容が、どんな水準で求められているのか理解しているので、基準に達しない資料が会議に提出されることはめったにない。
だが一度だけ、不十分な6ページ資料を受け取ったことがある。中身のない決まり文句を並べ、検討すべき難しい課題を避けていた。私はその文書をやんわりと差し戻し、まだ議論の準備ができていないようですね、と言い添えた。そして会議を延期し、文書を改良するよう促した。忌憚のない意見を言うことは、発表するチームを助けることにつながる。
どうやって読んでいるのか、訊いてみた
会議では全員が同じ文書を読むが、ジェフ(ベゾス)にはナラティブ(叙述)形式による資料を読み取る不思議な能力があるのか、だれも思いつかないようなことをいつも指摘した。
ある会議のあと、なぜそんなことができるのか訊いてみた。