アパレル不況でも過去最高益。 時代が追いついたサステナビリティの先駆者

アバンティ社長の奥森秀子

四半世紀かけて追求してきた理念と製品は、ようやく花開いた。次に目指すのは、オーガニックコットンを循環させる「再生」の仕組みだ。


「時代がようやく追いついてきました」

アバンティ社長の奥森秀子は、業績好調の理由をこう表現する。コロナ禍でアパレル業界が苦境にあえぐなか、オーガニックコットン(無農薬有機栽培綿)製品を展開する同社は、2021年7月期の売り上げが11.9億円、経常利益が6.9%と過去最高益を記録。女性向けのインナーやホームウェア、ベビー服などを扱う自社ブランド「プリスティン」の販売額が前年比で2ケタ伸びた。

1985年の創業当時から追求してきたのが、「地球環境に負荷をかけない」製品づくりだ。その理念が、エシカル消費への意識の高まりと相まって人々に支持された。「コロナ禍で、私どもの思いにお客様が共鳴してくださった」。

ブランドが誕生して25年。プリスティンは、一貫して環境と人に負担をかけないものづくりに取り組んできた。例えば、製品の染色。化学染料による染色をせず、無染色を基本とすることで水の使用量を抑え海水汚染を避けるなど、こだわりを貫き通している。

製品が選ばれるもうひとつの理由は、肌目線で考えるものづくりと丁寧な仕上がりが生む触り心地だ。編地と編地の間に空気が入る生地の開発やその加工など、国内の職人による繊細な手作業が「究極の心地よさ」を実現した。「同じオーガニックコットンの原料を使っても、この肌触りは誰にもまねできません」と奥森は自信を込める。

ブランドとしてはめずらしく、顧客層は20〜70代と厚みがある。こだわり抜いた理念と製品は流行に左右されることなく、着実にファンを増やしてきた。手書きの手紙を送るなど、こまやかな接客も特徴で、顧客の大半はリピーターだ。この好循環が業績を下支えしている。

ただ、時代が追いついたという言葉通り、最初から順風満帆だったわけではない。ブランド立ち上げの当初は、取引先に製品コンセプトを説明しても、「理念はいいが、もうけることは難しい」と皆が口を揃えた。生産工場も耳を貸すところは少なかった。「薬剤や水の使用を控えて環境にいいつくり方でとお願いするのですが、発注量が少ないのに手がかかるため、なかなか引き受けてはいただけなくて」。それでも地道な活動を続け、時間をかけて着実に理解者を増やしてきた。

ブランドが確立した同社が次に挑むのは、「再生」をテーマとした循環型の仕組みづくりだ。21年、国内8拠点で綿花の栽培プロジェクトを開始した。日本の綿花自給率はほぼ0%。奥森は、まず30年までに自社製品で国産綿の混用率を2%にする目標に掲げる。

「オーガニックコットンを通じて大地から再生までをシームレスにつないでいく。目指すのは、100年企業です」


奥森秀子◎アバンティ代表取締役社長。武蔵野短期美術大学卒。アパレルメーカーで企画・デザインを担当後、百貨店の研究所を経て、1995年にアバンティ入社。ブランドディレクターとして商品開発に従事。2018年9月より現職。

文=中沢弘子 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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