赤ちゃんがくわえるだけで電解質測定、「スマートおしゃぶり」開発

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ワシントン州立大学の研究者らが、新生児の健康状態を唾液を使って簡単にモニターできる「スマートおしゃぶり」を開発した。赤ちゃんがくわえている間に唾液を採取し、ナトリウムやカリウムなど電解質の濃度をリアルタイムで測定。結果をワイヤレスで医療従事者側に送信してくれるスマート医療機器だ。

研究チームによると、新生児の電解質濃度の測定はこれまで採血によるものが多かった。しかし、この方法は侵襲的で痛みを伴う場合もある。そこでチームは、血液ではなく唾液を採取して行う手法を考案。イオン選択性センサーやフレキシブル回路、マイクロ流体チャンネルなどを活用して、唾液から電解質モニタリングを行う「スマート生体電子おしゃぶり」を作製した。

電解質は人間の生理機能で重要な役割を果たしている物質で、わずかに変化しただけでも代謝バランスや恒常性を乱す可能性がある。濃度は血液検査で容易に測定できるが、非侵襲的な測定方法はこれまでなかった。新開発されたスマートおしゃぶりは専門誌「Biosensors and Bioelectronics」で発表された。

おしゃぶりを健康管理デバイスにするというアイデアはこれが初めてではない。英国のブルーマエストロ(Blue Maestro)社は数年前、赤ちゃんの体温や位置に関するデータをブルートゥースで親のスマートフォンなどに通知する機能を備えたスマートおしゃぶりを発売している。

スマート医療機器の登場は、患者に提供できる価値という面で画期的だった。心臓のモニタリングから血糖値の追跡まで、ウェアラブル機器はヘルスケアの常識を変え、患者が自分の体の状態を以前よりずっと詳しく理解できるようにした。需要は非常に大きく、デジタル患者モニタリング機器市場は2030年には4500億ドル(約57兆5000億円)規模に拡大する見通しとなっている。

スマートおしゃぶりによる電解質測定では針を刺す必要はなくなるものの、きわめて重要な点である精度と安全性ではまだ高いハードルがある。精度や相関的な予測値に関してはやはり血液検査に分があるのが実情だ。

スマートおしゃぶりはまだ生まれて間もない技術であり、成熟するまでにはもう少し時間がかかるだろう。それでも、将来的に新生児ケアで不可欠なものになる可能性を秘めた有望な技術なのは間違いない。

編集=江戸伸禎

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