デジタルテクノロジーを武器に。制約を超える表現はどう生まれたか?

TOKYO2020パラリンピック開会式の演出「The Wind of Change」/ Getty Images


そのためぼくは、機械の力を借りることで乗り越えようと考えました。そこで、選手名のテキストデータをそのまま自動的にデザインするシステムと、画像認識で誤字脱字がないかをチェックするシステムを開発しました。


選手名のテキストデータをそのまま自動的にデザインするシステム


画像認識で文字校正するするシステム

プロデューサーの予想通り、開会式前日の夕方に20人近くの変更が発生したのですが、このシステムですぐに対応し、3時間後には校正まで終えました。映像出身の人たちは魔法のようだと驚いていました。

当日、それはまるで空港の電光掲示板のように、360度に選手の名前が表示され、空間の演出をさらに良いものにしたと思います。


会場には選手の名前が表示された / Getty Images

選手入場のフィナーレは、すべての色も形も違う「風」がひとつになり、花火として打ち上がりました。

ぼくは気がつくと、国立競技場最上階のオペレーションルームから飛び出て、その景色をカメラに収めていました。誰も観客のいない国立競技場のこの光景をずっと忘れないと思います。

人の心を動かすためにクリエイティビティはある。


ぼくたちは、デジタルテクノロジーとアイデアで、あたらしい表現や体験をつくっています。その目的は、人の心を動かすためであり、ワクワクさせるため。

そして、その先にある企業や行政の活動、社会の課題解決においても、デジタルクリエイティブは成功するために必要な武器だと思っています。いくらルールや仕組みをつくっても、人は心が動かないと行動が変わらない。ぼくは、PLAYFUL SOLUTIONという言葉が大好きです。問題を解決するなら、楽しくてワクワクするやり方がいい。

今後も、自分なりの視点で、クリエーティブ、デジタルテクノロジーによる表現や体験開発が、どうビジネスに役立つのか、定期的に紹介していこうと思います。ではまた。

文=田中直基

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