サステナブルも教育も。「Ode」シェフが信じるレストランの伝搬力

「Ode」の生井祐介シェフ


心地よい衝撃を受け、どうしたら世界的レベルに辿りつけるのか。もやもやとした気持ちを抱えていたときに、お客さまの一人から、「日本サステイナブル・レストラン協会」を紹介された。FOOD MADE GOODという世界的な組織で、本部はイギリスにあり、レストランが主導するサステナブルな食の未来を実現するべく活動や援助を行っている組織である。

残念ながら日本では知名度は低いが、ベストレストラン50のサステナブル賞も、ここが認定をしたうえでベストレストラン50の本部が決定するほど、世界的には力を持つ。



入会を考えていると、さっそく日本の本部のメンバーがプレゼンに来店してくれた。そこで、生井氏にとって何より印象的だったのが、“ユース”と呼ばれるまだ大学生の若者たちが幹部に帯同していて、説明は主に彼らがしてくれたことだった。

サステナブルとは何か、から始まり、気候変動、絶滅危惧種とは、など一通り。より具体的には、生ゴミを捨てることでどれだけのエネルギーが浪費されるか。まずゴミを運ぶのにCO2を排出し、燃やすのに莫大なエネルギーを必要とし、さらに燃えかすを捨てる場所が必要になるなどが説明された。

20歳そこそこの子たちが、そうした事象を自分ごとして危機感をもってとらえ、懇切丁寧に語っている。同じ年ごろだった頃の自分であれば、その辺にゴミを捨てていたかもしれないのに、真剣に地球の未来を考えていることに感動したという。

そして入会後、生井氏は、得た情報を店の若いスタッフに伝えるという勉強会を始めた。しかし会を重ねるうちに、「これは、若いもの同士、直接伝えあい、感じ合った方がよいのではないか」と、自分は保護者のような立場で参加しながら、ユースの話を若いスタッフが聞くという形で行うようになった。

「勉強会が進む中で、スタッフの意識は確実に変わっていきました。例えば、野菜の廃棄などにはすごく敏感になりましたね。うちはおまかせのコース料理の店なので、どうしても無駄が出るんです。勉強会の一環として、ゴミを出さないようにするというテーマで工夫させるということもやってきました。端材をパウダーにして盛り付けにつかったり、焼き菓子に加えたり、乾燥させてお茶にしたり、発酵させてソースに加えたり」


野菜やフルーツ、ハーブの端材を乾燥させてお茶にした「サスティ」

決して目新しい作業ではないですが、「自発的にそうしたことが考えられるということが大切」だと生井氏は考えている。「今や、レストランのトップがサステナブルに関する意識を持っているのは当たり前。それを若い世代にどう伝えていくかこそが課題だと感じます」
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文=小松宏子 写真=Ode提供

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