ビジネス

2022.06.02 10:00

投資家も会社のファンに 味方を増やす「盛らない」コミュニケーション

北の達人コーポレーション社長 木下勝寿


株主を味方につけるコミュニケーション


──IRでは動画を活用するなど、非常に丁寧なコミュニケーションをされているのが印象的です。株主との向き合い方で大切にされていることは。
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高く評価してもらうのではなく、「適切に評価」してもらうスタンスを大切にしています。

たとえば我々のビジネスモデルは定期購入型ですので基本的に売り上げが積み上がっていきます。その代わり、新規顧客獲得には広告費も手間もかかります。つまり一気には大きくならない、長期・積み上げ型ビジネスなわけです。

ここでベンチャーに多くありがちなのが、自分たちを大きく見せようとしてしまうこと。株も商品と同じですから、過剰な期待は不満足につながります。先ほど商品開発でお話しした通り「正しい理解」をお客様にしていただくことが大切なのです。
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なので我々のIRでは「時間はかかるけど、崩れず成長し続けることで企業価値を高める」という戦略を理詰めで、丁寧に説明するようにしています。逆に、急速な成長を求めるなら他の株を買ってくださいというスタンスなのです。

──株主もお客様と同様に、満足度を高めるためのコミュニケーションを徹底されているのですね。

上場した直後はずっと株の掲示板を見ながら「正しく伝わってない」と気づいたことがあればすぐにIRページを自分で書き換えていました。

そうするとだんだん「正しい理解」をしてくださる投資家が増え、彼らが熱狂的なファンになってくださります。例えばちょっと株価が伸びているからという理由で株を買った人が、株価が下がったと文句を掲示板に書き込んだりしても「戦略をわかってから株を買え」と守ってくださるんです。こうなれば、株主は経営者の最大の味方になってくれます。



──株主を会社のお客様・ファンだと捉えているのですね。

株主が増えたらめんどくさくなるとかいうのは変な話で、経営を信じてお金を出してくれるファンが増えることはとても良いことなはずです。大切なのは一切盛らずに、できること、できないことを嘘なく伝えること。

私たちがベンチャーキャピタルから初めて資金調達をしたのは、インターネットバブルで「盛る起業家」が全盛だったライブドアショック(2006年)の直後のこと。

当時から私は「絶対に盛らない」スタンスを大切にしていたので希少価値が高かったようで、話をした4社中3社に投資していただきました。経営に失敗したら株主に怒られるのは当たり前。でもちゃんと謝ったら許してくれる。嘘偽りなく株主に常に真摯に向き合うことを大切にすべきだと思います。


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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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