ビジネス

2022.06.02 10:00

投資家も会社のファンに 味方を増やす「盛らない」コミュニケーション

北の達人コーポレーション社長 木下勝寿

「北の大地、北海道において高い技術と能力を持ち活躍するプロフェッショナル集団でありたい」という思いが社名に込められた、美容・健康商材をD2Cで販売する北の達人コーポレーション。東証一部上場後も成長を続け、その圧倒的な利益率の高さでも知られている。そんな同社を牽引する代表取締役社長 木下勝寿氏に、起業家にとって重要な素養、利益を生み出す事業の創り方などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全3話中3話)

第一話:マインドだけでは成功しない 起業家が陥りがちな「お金の失敗」
第二話:「商品への満足」を継続させる、顧客コミュニケーションの秘訣


海外展開は“まず市場に問う”


──台湾にも支社を展開されています。海外展開で大切にされていることは。

事業の組み立て方に国内と海外であまり差はなく、結局は市場があるかどうかです。

まず海外へ出ていくタイミングですが、台湾市場については、10年ほど前に楽天さんと一緒に台湾進出した他社さんから話を聞いたところ、「1回の注文に平均4回の問い合わせ電話がかかってきた」というほどECが根付いていない時代でした。そのタイミングで進出しても、市場の黎明期すぎて事業立ち上げは無理だったでしょう。

我々が進出したのが3〜4年前。ECやSNSは広く浸透していて、定期購入の文化はあまり無いが「まとめ買い」の文化はある。タイミングとしては問題ないと判断しました。

次に商品ニーズです。最初に我々が台湾向けに越境ECで売り出したのは「カイテキオリゴ」という便秘対策の健康食品。日本では非常に売れていたのですが、これが台湾参入当初は全然売れなかった(笑)。

なのに、次に「二十年ほいっぷ」という洗顔フォームを発売してみると、これが一時期は日本よりも売れるほどの大ヒットを記録。商品ニーズというのは国や地域によってここまで異なるのかと肌身で体感しました。

──市場を調べるために、国内同様にモニター調査なども細かくされているのでしょうか?

我々のようなEC事業者であれば日本にいながらその国用のページを作り、SNSやグーグルに広告を出すだけで海外進出できます。なので調査を深くやるよりも、まず市場に出してみることのほうが海外展開においては重要だと思います。

実は台湾に物流拠点を作ろうとしていた頃、先ほどの「二十年ほいっぷ」がなぜ売れたのか、現地の人にインタビューしてみたんです。

最初にある女性に「なぜ二十年ほいっぷが売れたと思いますか?」と聞いたら、「台湾ではスキンケア用の洗顔が無いから」と答えました。日本ではすでに存在している市場でしたが、たまたま台湾では我々が先駆者だった。そこに「二十年ほいっぷ」が来たことで、洗顔でもスキンケアできるという驚きとともに売れたのだというわけです。

次に、別の人に商品が売れていることを言わず、「二十年ほいっぷという商品をどう思いますか」と聞いてみました。すると、「台湾ではスキンケア用の洗顔が無いから売れない」と断言されてしまったんです(笑)。

もし先に調査をしてこの人の話を聞いていたら進出をしていなかったでしょう。自分がよくわからない海外のことだと、現地の少数の意見に強く影響を受けてしまいがちだからです。
なので海外展開はまず市場に出してみること。そして実際に買われるかデータを見ることが大切だと思います。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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