この問題は、4月末に実施されたピュー研究所による調査結果のなかでも浮き彫りになっていた。この調査においては、インフレについて「非常に大きな」あるいは「かなり大きな」問題だと回答した人の割合は、実に全体の93%を占めた。さらに、こうした認識は、実際に人々の行動を変えつつある。
ファースト・インサイトが、米国在住の成人1000人を対象に4月に行った調査では、全体の97%が、現時点で家計の将来設計に、高いインフレ率を織り込んでいると回答した。さらに、生活必需品や医療に出費を集中させる傾向が強くなったと答えた人の割合も、4人に3人にのぼっている。
いまの米国人にとって、インフレは、他を大きく引き離す最も大きな心配事と言える。またこれは、小売業が夜も眠れぬほどの不安を感じる要因でもある。
確かに、燃料、食料、住宅、車などの価格は上がっている。だが、メディアが絶え間なく「破滅の日は近い」と、危機感をあおってきた側面もある。「ここ数世代で最悪のインフレ!」「状況はどんどん悪くなる一方だ!」といった調子だ。
メディア側の言い分は正しいのかもしれない。だが、今の時点で私が不思議に思うのは、それならなぜ、消費者がいまだにモノを買い続け、店舗の駐車場は買い物客の車で埋まり、休暇旅行の予約状況も順調なのか、という点だ。
誰もが神経をとがらせているのかもしれないが、バンク・オブ・アメリカの報告によると、4月のデビットカードおよびクレジットカードの利用高(全所得層合計)は、前年と比較して13%上昇している。さらに重要なのは、この調査結果で、1世帯あたりのカード利用高が、2019年と比べて24%増加している点だ。2019年といえば、今から3年前。コロナ禍の影響をまだ受けていない頃だ。
小売業界が注視しているもう一つの指標が、ショッピングモールやセンターの来訪者数だ。買い物客の出足に関するデータを分析する「Placer.ai」のまとめによると、屋内型モール、屋外型ホームセンター、アウトレットモールでは、人出が盛り返しているという。
なかでも最も上昇幅が大きいのはアウトレットモールで、4月の来客数は前月比で31.6%増と大きく跳ね上がった。また、屋内モールの来客数も、前月比で17.4%と増加し、2019年の水準とほぼ並んだという。