パタゴニア・H&Mも参入。古着市場と彼らの「蜜月」が始まった

H&Mの中古商品は、日本ではメルカリなどで広く流通しているが──。 (H&Mのカーディガン。Photo by Jeremy Moeller/Getty Images)

古着を着ること、読者の皆さんはありますか? 筆者自身は古着にたいして全く抵抗もなく、むしろ愛好者と言えるのですが、気がつくと上から下まで古着だったということもあります(ビンテージアイテムのマニアなどではなく、単なる「古着」です……)。往々にして過酷な労働環境で生産された衣類が、誰にも着られることもなく捨てられていく悲しい事実を知ったころから、古着を積極的に着用することにしました。

「大量廃棄」で検索すると?


さてここで、「大量廃棄」と検索エンジンで入力をしてみませんか。そこに現れる予測検索のワードのひとつに「アパレル」があります。環境負荷の高い業界の代表となってしまったファッション業界。実際のところ、原料の生産に始まり、縫製から販売、使用後と、全てのプロセスにおいて、ロスが常態化しています。まずは日本の環境省によるインフォグラフィックをご覧ください。ここで明らかなのは、生産過剰とリユースの圧倒的な不足です。


(出典:環境省ホームページ)

この問題意識の大きな高まりがイノベーションを生み出す原動力となり、サーキュラーエコノミーへの取り組みをスピードアップさせているのが現在です(こちらも参照)。

ファッションブランド自身が、生産量の増加と大量販売を目指す旧来の習慣を脱するだけでなく、衣料品のリサイクルやリユースを促進しようと動き出しました。そして、維持可能な消費活動の場所を自ら率先して提供することで、増え続けるアパレル廃棄物の問題に歯止めをかけようとしています。今回の「データで発見、ワールド☆トレンド」では、リペアとリセールと2大トレンドから、世界の消費者とトップブランドの最新動向にクローズアップしてみましょう。

海外の「メルカリ、ヤフオク」


日本でオンラインのC2C中古品売買といえばメルカリやヤフオクなどが代表的です。読者の皆さんも愛用されているかもしれません。海外に目を向けてみると、イギリスのDepop、アメリカのThe RealReal(それぞれ2011年に創業)など、ファッションに特化したリセール・プラットフォームが人気を博しています。

循環型の生産・消費モデルの考え方


(参考:Ellen MacArthur Foundation)

Depopはその「インスタっぽい」ユーザーインターフェイスがウケて、Z世代から絶大な支持を得ていると言われます。アメリカにおいても10〜20代の利用者が80%以上を占めています。とは言えども、Z世代だけが市場経済を握っているわけではないのも事実。ここで、リセール市場について世界の消費者の声に耳を傾けてみましょう。

アメリカの一般消費者の中古衣類に対する考え方


(参考: Global Data; ThredUP)

自社で中古品を扱う業界といえば、自動車が先駆者として挙げられるでしょう。自社エンジニアの整備を経て、補償までが付いた高品質の中古車を販売・購入する仕組みは既に当たり前となっています。アパレルについてはこれからに期待ですね。自社の中古品を扱うブランドに好感が集まる傾向が見てとれますね。下取りに対する期待もとても強くなっています。

日本でもモールやショップ店頭などで回収ボックスを頻繁に見かけるようになりました。これらは「無料の不用品回収」が中心となっています。消費者のエコ意識を高め、リサイクルを促進するという点では素晴らしいのですが、生産者側に対して「リユースできるような高付加価値・高品質な商品を、適切な量のみ作っていく」という意識を持たせるには至らないともいえます。

「ブランド自身によるリユース」への高い期待……


欧州においては、国により少しバラつきはあるものの、ブランド企業による率先的なリユース・リサイクル品の展開・販売に対する高い期待が見て取れます。

ヨーロッパ各国で消費者が中古品や再生品をもっと見たいと思う場所(2021年)



(参考:Harris Interactive; Oney; ID 1269438)

従来はプラットフォーマー側が中心となって盛り上げてきたトレンドに目を覚ましたブランド企業が動き出しています。リセール市場だけでなく、製造者ならではと言える「リペア事業」も活発になっています。先行するファッションブランド各社の取り組みをみてみましょう。

H&M「Sellpy / Cos Resell」

2つの中古品販売プログラムを展開中。姉妹ブランド「COS」商品のみを提供するResell by COSと、EコマースプラットフォームのSellpyだ。H&Mが出資も行うSellpyは欧州の24の市場で事業を展開、グローバルサプライチェーンユニットを活用したH&Mとの更なる提携を発表している。

Patagonia「Worn Wear」

下取りプログラム「Worn Wear」は、着用済みのパタゴニア製品を返品し、自社ポイントと交換することを推奨。パタゴニアは回収した製品を再利用し、店舗やオンラインショップで再販している。製品のライフサイクルを延長することを目的としている。

The North Face「Renewed / Clothes the Loop」

「Renewed」は、中古の自社ブランド衣料を修理・再生する取り組み。破損、欠陥、返品された商品を修理やアップサイクル、リサイクルを行なっている。「Clothes the Loop」は、ブランドを問わず衣料品の回収をノースフェイス店舗で受付、次回購入時に使えるクレジットを獲得できる。

Lululemon「Like New」

アクティブウェアのブランドLululemonのリセールプログラム「Like New」は、シンプルな下取り方式だ。着用済みのlululemon商品を店舗に持ち込むと、ギフトカードがもらえる。商品カテゴリーにより下取り額が決まっており、分かりやすい。Like Newの購入はオンラインのみ。

Levis「Secondhand」

老舗のリーバイスも循環型エコノミーに積極的だ。同社のセカンドハンド・プログラムでは、米国にあるすべての小売店でヴィンテージジーンズやデニムジャケットの下取りを受け付けている。必要に応じたリペアを経て、オンライン販売を行なっている。

Adidas「Choose to give back」

アディダスも環境負荷の低減に余念がない。同社は「Choose to give back」プログラムを通してあらゆるブランドの中古のアパレルやスポーツウェアを送るよう顧客に呼びかけている。商品の内容や程度に応じてメンバーポイントやバウチャーが付与される。中古アパレルECサイトのthredUP社のResale-as-a-Serviceプラットフォームを活用している点にも注目。2022年にはより多くのマーケットに展開予定という。

サーキュラーエコノミーの実現をブランド側が手掛けること、それは生産者の責任と言えます。

また次回の「データで発見、ワールド☆トレンド」でお会いしましょう! 

※今回のテーマが含まれるレポート「Consumer Trends 2022」の日本語訳を、東京都の有楽町電気ビル内「b8ta Yurakucho」にて無料配布しています。

(アンコールがありそうかと思い、それに応えて… …。最後にもう3枚だけ、環境省のインフォグラフィックを掲載します。)



(出典:環境省ホームページ)

文=津乗 学

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