圧倒的に男性が多く、未だ全体の8%未満に過ぎない女性自衛官の生の声を基に、著者が自らの防衛省勤務経験を生かして描いた『女性自衛官』(上野友子・武石恵美子著、光文社新書刊)は、働くすべての女性たちの胸を打つはずだ──。
文筆家・馬場紀衣氏はそう指摘する。読みどころを紹介する。
命を人のために投げ出さなくてはいけない仕事
本書によれば、自衛隊が最初に女性を採用したのは保安庁時代の1952年。採用は看護師(当時は看護婦と呼ばれていた)資格を持つ者に限定されていた。
1967年に陸上自衛隊、1974年に海上・航空自衛隊で一般職域でも女性の採用が始まり、2018年に女性に対する配置の制限が撤廃されることになる。
ライフステージの変化によって今後のキャリアをどうすべきか悩む女性は多いが、任務の特殊性のためか圧倒的に男性が多く「男性的」な構図が色濃く残る自衛隊に生きる「女性自衛官」もまた、大きな壁にぶつかってきた。ちなみに、女性自衛官は未だ全体の8%未満に過ぎない。
では、女性自衛官は「自分らしさ=私」と「任務遂行=公」をどのように共存させてきたのか。国を守るという「公」の「任務」が強烈な自衛官は、「私」と「公」の調和、調整の難易度が高い組織である。
国防、人命に関わる災害支援、国際協力など即応性が求められるうえに失敗が許されない業務は、はた目には子どもを持つ母親には厳しいストレスになるのでは、と感じてしまう。実際、インタビューに答えた働くママ自衛官もそうした状況に苦しんでいるようだ。
「私は、子どもに『何かあったらママもパパもいなくなるから』と言っています。自衛官である以上、そういう部分は絶対選べる仕事じゃない、私だけ生き残りますとか言えないと思っています。平和であってほしいというという気持ちもありますけれど、何か起こったら家を出ていかなくてはいけないということは思っていますね」