香港の生鮮食品の90%以上は輸入品で、そのほとんどが中国本土からのものだ。現地の垂直農法のスタートアップ「Farm66」の共同創業者でCEOのゴードン・タムは、「パンデミックを受けて、人々は地元産の野菜の生産性が非常に低いことに気づいた」と語る。
タムによると、香港で消費される野菜のうち、地元で生産されたものは約1.5%にすぎないという。しかし、IoTセンサーやLED照明、ロボットなどの最新テクノロジーを駆使してビルの屋内で野菜を栽培するFarm66は、地元での食糧生産を強化し、そのノウハウを他の都市に輸出できると考えている。
「垂直農法は、都市の屋内で野菜を栽培できる素晴らしいソリューションだ。このテクノロジーがあれば、輸入品に頼らなくても済む」と、タムは香港の工業団地にある同社の垂直農場で語った。
香港における垂直農業のパイオニアであるタムは、共同創業者でCOOのビリー・ラムと共に2013年にFarm66を立ち上げた。省エネ型のLED照明や波長テクノロジーを農場に使ったのは同社が初めてだという。「光のスペクトルの色によって、植物の育ち方が異なることを発見したのが、技術的なブレークスルーだった。例えば、赤いLEDの光は茎を早く成長させ、青いLEDの光は植物の葉が大きくなるように促す」と彼は語る。
Farm66は、約2000平方メートルの屋内農場の管理にIoTセンサーやロボットを使用し、そこで働く人々に快適な労働環境を提供している。「伝統的な農業の大きな問題は、人手不足だ。テクノロジーを駆使すれば、労働環境を改善し、若者が農業をやりたがるようにすることができる」とタムは語る。
Farm66は現在、データアナリストや食品科学者、機械エンジニアなどの15人の正社員を雇用し、月に最大7トンの野菜を生産している。
香港のテクノロジー系のベンチャーキャピタルParticleXのミングルス・ツォイは、Farm66が光量や水流、空調に関するデータアナリティクスを駆使している点を特に評価して、出資を行ったという。「ゴードン(タム)と彼のチームが、農業のメカニズムについて非常に多くのデータ分析を行っていることを当社は評価した」と彼は述べている。
Farm66は累計400万ドル(約5億円)以上の資金を調達しており、他の投資家には、アリババのAlibaba Entrepreneurs Fundや香港政府が支援するCyberport、香港の不動産開発会社Sino Group(信和集団)などが含まれている。