ビジネス

2022.06.25 11:00

ウォール街も注目の『エクソシスト』続編、4億ドルの知財価値はあるか?

Shutterstock(イメージ映像)


1作目の母親役、エレン・バースティン再び──


1作目で悪魔に取り憑かれた娘の母親役に扮し、オスカーにノミネートされたエレン・バースティンがかつての役どころに戻るのは、たとえばリンダ・ハミルトンが『ターミネーター』でサラ・コナー役を何度も演じ、『ハロウィン』シリーズ第1作目で殺人鬼ブギーマン、マイケル・マイヤーズが殺し損ね、その後も追い続けるローリー・ストロードをジェイミー・リー・カーティスが繰り返し演じるのとはわけが違う。
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そう、89歳になる、世界的な有名女優とはいいがたいバースティンに再び演じさせることには、落とし穴も多くあるのだ。熱烈なファンだけを相手に上映する余裕のある、制作費1000~2000万ドルをいとわないブラムハウスらしい映画ではないからこそ、その落とし穴のありどころは見えやすい。


2018年10月22日、カリフォルニア州ビバリーヒルズで行われたアカデミー賞45周年記念「エクソシスト」上映会に姿を見せたエレン・バースティン(Photo by Morgan Lieberman/Getty Images)

繰り返しになるが、この映画はユニバーサルとピーコックが全力を注ぐ虎の子的な作品になる。レスリー・オドム・Jrを主役に据えた作品を劇場で上映するということは、少なくとも劇場で観るだけの充分な価値を提供できると自負しているからに違いないだろう。ネットフリックスで『スペンサー・コンフィデンシャル』を大ヒットさせた、家でくつろいで再生ボタンを押すだけ、という人々の「怠け癖に賭ける」よりも、勝算があると信じているのだ。
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ユニバーサルは、ブラムハウスをはじめとする関係者が『ハロウィン』に注いだのと同じだけの力を『エクソシスト』にも注ぐことを期待している。けれども、そもそも『エクソシスト』はかつて大ヒットした現代のクラシックとして知られているにすぎず、とりたてて人気のある登場人物がいるわけではなく、マイケル・マイヤーズの登場する作品を繰り返し観る若者を映画館に引き寄せる魅力には欠けている──かもしれない。

悲観的な見方をすれば、ユニバーサルは(せいぜい)B級のIPコンテンツに過剰なまでに高い金額を払ったが、それは単に「払える能力があることを示しただけ」だったという結果に終わるかもしれないのだ。ここ15年にわたって映画館を苦しめてきた「IPコンテンツのためのIPコンテンツ」という罠にハリウッドとテクノロジー業界大手を追い込んだ動画配信戦争は、多額の金を過剰に支払わざるを得ない事態にまで拡大している。

翻訳・編集=北綾子/S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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