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2022.06.25 11:00

ウォール街も注目の『エクソシスト』続編、4億ドルの知財価値はあるか?

Shutterstock(イメージ映像)


動画配信業界は「劇場公開」がお好き?


いずれにせよ、この「大盤振る舞い」契約の裏には、ピーコックを強大な動画配信プラットフォームとして育てる意図が潜んでいることは明らかだ。忌憚なくいえば、筆者は「IP(知的財産)コンテンツのためにIPコンテンツに投資する」戦略が動画配信時代の大きな問題だと考えている。
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それでもプラス面に眼を向けよう。新『エクソシスト』シリーズの少なくとも第1作が(そして、その興行成績が良ければ、おそらくは続けて作られるだろう2作目も)劇場公開されれば、「この映画は劇場で公開された」という映画ならではの暗黙の付加価値によって「ハク」がつくことを、親会社のコムキャストは十分に理解しているようだ。それどころか、おそらくどの制作会社も、「劇場公開された」ことの効果は理解していると思う。だからこそネットフリックスは、ソニーの劇場公開後最初の有料テレビ放映権を獲得するために大金を支払ったのだから。

ネットフリックスでさえ、ザック・スナイダー監督の『アーミー・オブ・ザ・デッド』をシネマークの映画館で1週間上映することで、この(すばらしい)ゾンビ・アクション映画には大金を投じる価値があることを証明した。しかし、動画配信プラットフォームが相手にしているのは、パンデミックの影響で流動化した「映画業界」であり、他のどんな収益よりも動画配信による収益をはるかに高く評価する「ウォール街」だ。だからといって『エクソシスト』3部作に4億ドルも費やすことが得策かどうかは別として──。

いまなお歴代最高の興行収入、R指定のホラー傑作


ウィリアム・ピーター・ブラッティの小説をウィリアム・フリードキン監督、ブラッティ脚本で映画化した1973年公開の『エクソシスト』は、インフレ調整後のR指定のホラー映画としていまなお歴代最高の興行収入(公開時に2億3200万ドル、2000年のインフレ調整後は10億1500万ドル)を記録した。
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もっとも、いまなお歴代興行収入の第2位を保持する『悪魔の棲む家』(1979年の公開時に8600万ドル、インフレ調整後は3億ドル)を見ても、「シリーズ化された作品」が劇的な収益をあげた例はない。『エクソシスト』シリーズの続編についても、名作の呼び声高い、1990年公開の『エクソシスト3』を含めてもいずれも大ヒットしたとはいえず、フォックスが放送して良作と評価されたテレビ・シリーズも2シーズンで打ち切りになった。エクソシストシリーズは、『ハロウィン』のように、ファンサービスで「過去を新たに設定し直す」要素を備えていないこともその原因かもしれない。
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翻訳・編集=北綾子/S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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