運営するのはSDFキャピタルで、同社代表の福田拓実氏、マネーフォワードシンカ、成長企業の経営支援などを手掛けるWARCが出資している。
同ファンドは20日に1stクロージングを完了しており、紀陽銀行などが資金を提供。2023年春頃までに総額最大50億円を目指す。スタートアップのみを対象にした独立系のデットファンドが設立されるのは、国内初となる。
スタートアップ業界では、株式の希薄化を防ぎたい、次の増資までの繋ぎ資金が欲しいといった声が挙がるが、これまでのベンチャーキャピタル(VC)による投資や銀行借入では対応しきれていないのが現状だ。今回のファンド設立により、資金調達手法に株式発行や銀行借入以外の新たな選択肢を提供し、国内スタートアップのニーズに対応したい考え。
いまのスタートアップへの投資環境を見ると、VCは7800憶円、民間金融機関で500億円、公的資金で2500億円。
提供=SDFキャピタル
本ファンドは、これらの・資金調達方法の中間に位置し、アメリカの調達市場ではベンチャーデットファンドが2割程度のシェアを持つことから、2000億円程度の融資機会創出を目指すという。
金利についてもVCより低く、1〜3%の民間金融機関よりは高い、3〜15%に設定した。
24日に行われた記者会見で福田氏は、VCとの違いについて、次のように語った。
「10倍、100倍の投資リターンを考えるのがエクイティ(新株発行などによって調達された返済義務のない資金)のプレイヤーです。一方で我々にとっての最優先は元本回収です。VCさんからすると、やや投資魅力にかけるスタートアップでも、1年後におそらく資金が返ってくるだろうと思えるような企業であれば、我々はウェルカムです。
日本のスタートアップの環境は諸外国に大きく差をつけられているなかで、当ファンドはエクイティ調達ではない方法として、一定の役割があると考えています。
このファンドを機に、デットの活用がスタートアップ業界に行き渡るようにしたい」
国内のベンチャーテッド産業の整備については、経済団体連合会が3月に公表した「スタートアップ躍進ビジョン」においても言及されるなど、最近重要性が認識されるようになってきた。
国内初のスタートアップ・デットファンドが成長企業の課題にどう寄り添うのか、今後の動向に期待したい。