経済・社会

2022.05.25 18:00

差し押さえで帆を下ろしたオリガルヒのヨット

差し押さえで帆を下ろしたオリガルヒのヨット

ウクライナ侵攻に伴うオリガルヒ(新興財閥)への制裁が始まると、ヨットはすぐに標的となった。富を象徴する一方で、“密談”できる移動手段を奪われた富豪たちはどこへ向かうのか。


富を表すものとして、ヨットほど象徴的なものはあるまい。

グーグルに初期投資した大学教授は、同社の上場で“書面上のビリオネア”になるや、ヨットの売り込みが届くようになったという。「ヨットは『莫大なお金が注ぎ込まれる海に開いた穴』だと何かで読んだことがある」と、その教授は呆れるように語った(当然、買っていない)。

だが、湯水のように金が使えるロシアのオリガルヒとなれば、話は別だ。富を誇示できるヨットは、“密談”の場としても理想的だった。西側諸国による制裁で失うのは富だけではない。自由もである。

THE GROUNDED FLYING FOX



ドミニカ共和国のサントドミンゴ港に停泊する「フライング・フォックス」。所有者は、モスクワドモジェドヴォ空港の会長を務めるオリガルヒのドミトリー・カメンシュチク。カメンシュチクは西側諸国による制裁対象になっていないが、マネーロンダリングと武器密輸の疑いのかどで同船を接収された。

ONE THOUSAND AND ONE NIGHTS



露ウラジーミル・プーチン大統領が所有しているとの報道もあるスーパーヨット「シェヘラザード」。推定7億ドルの140m超級の同船は、3月23日、イタリアのトスカーナ州カッラーラ港で係留された。乗員は、プーチン大統領とのつながりを否定し、船の所有者も制裁の対象となっているオリガルヒとは無関係のロシア富豪だと話しているという。

THE WITNESSTO HISTORY



4月16日にトルコのゴセック湾沖合で撮影された73m級の豪華ヨット「クリオ」。ロシア・アルミニウム(ルサール)の社長を務める“アルミニウム王”こと、オレグ・デリパスカの所有とされている。ロシア国外に14億ドル以上の資産を抱えているデリパスカは、2018年に米国、22年には英国から制裁対象とされており、クリオも寄港先が注目されていた。

KEEPER OF THE “PORT”



3月21日、ノルウェー北部のナルビク湾で撮影された68m級の豪華ヨット「ラグナル」。2月15日に入港したものの、地元の燃料販売店が燃料の補給を拒否しているため、出港できずにいる。制裁対象ではないが、所有者のウラジミール・ストラルコフスキーはKGBの元幹部で、露プーチン大統領とのつながりを指摘されており、住民の反発を受けている。

HALLUCINATION OR REALITY



3月21日、トルコ南西部ボドルム半島のムグラ港で撮影された138m超の豪華ヨット「マイ・ソラリス」。同船は、ロマン・アブラモビッチのために2021年に建造された。西側諸国の制裁により、英サッカークラブ「チェルシーFC」を手放した彼は、もう一隻ヨットをトルコの港に停泊させている。

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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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