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2022.05.26 10:00

藤原ヒロシと音楽とNFT 新たなプロジェクトABCRECORDSとは


ちなみに、「ABCRECORDS」のABCは、Authorized Bootleg Community(承認された海賊版のコミュニティ)という意味を持つ。

「わかりやすく言いやすいのがいいなと思って。ABCRECORDSってなんとなく響きがかっこいいかなと。ワードが先に浮かんで、いい言葉ないかな、とあてはめた」。サラリと言うが、この上なくシンプルなこの名前に、完璧に思想が表現されている。

ABCRECORDS

特に躊躇いもなく、「僕はアンチ著作権、というかアンチJASRACかな」と語るが、その根本にあるのは、批判というより、自由な創作への欲求だ。そしてその“アンチ”の思いが今回、NFTという武器により、平和的な形で実現する。

このプロジェクトに業界がどんな反応を示すと思うかと問うと、「儲かりそう、と思われるんじゃないかな」と静かに笑う。その発言の裏には、NFTに抱く懸念がある。

NFTでお金を稼ぐという後ろめたさ


藤原はこれまでにいくつかのNFTプロジェクトを展開。2022年1月、マーク・ゴンザレスと行った「NON FRAGMENT TOKEN」では、1点約7万円(7SOL、販売時のレート)のNFTが1万個、即座に完売した。

いわば大成功しているのだが、「NFTについて一番感じることは、お金を稼ぐという後ろめたさ。そこがカッコ悪いことでもある」と言う。

「今NFTは、『で、高くなるんでしょ?』という尾ひれが必ずついてくる。いいものでも、価格が上がる見込みがないと売れない。それがクリエイティブと相反する、マイナス要因だと思う」

一方で、期待もしている。「今はガス代(ブロックチェーンを利用する際の手数料)がかかるからどうしても高額になるけれど、最終的にはどんなものもブロックチェーンにのるべきだと思う。それによって“偽”の見せびらかしもなくなるはず」

それに、今回ABCRECORDSが採用している、購入した音源を特定のマーケットで転売すると、一部の金額がアーティストに還元される仕組みもNFTならではだ。それは、アーティストの持続的な創作活動のサポートにもつながる。

ABCRECORDS 藤原ヒロシが手掛けたジャケットアートワーク
購入後、音源データに加え、ABCRECORDSのロゴ素材とジャケットアートワークの画像データがダウンロード可能になる

ABCRECORDSでは5月27日から、藤原が手掛けた30点の楽曲を10曲ずつ、それぞれ24時間のオークション形式でリリースする。対応する仮想通貨はイーサリアム。購入方法や留意事項などの詳細はサイトで公開している。

このプロジェクトにより、無数のコラボレーションをしてきた藤原が、自由にコラボされる側になるともとれる。正式に“海賊版”を認める仕組みは今後、ミュージシャンやリスナーをどのように刺激し、どのようなコミュニティを生み出すだろうか。

編集=鈴木奈央 写真=小田駿一

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