ワールドカップの予選期間に目を向けても、米国の女子代表チームが得た賃金は、男子チームに比べて大幅に少なかった。ESPNの報道によると、予選の最終ラウンドで、男子の代表選手は、勝利を収めるごとに1人あたり1万8125ドルを手にした。一方、女子選手の勝利給はわずか3000ドルだったという。
今回結ばれた新たな協約は、米国の女子代表チームによる長年の圧力が実を結んだものと言える。同チームは、法廷闘争のほか、公に発言が伝えられるインタビューの中などで、女子サッカー選手が男子と同額の賃金を受け取れるようにすべきだと訴えてきた。
女子代表チームは、2015年、2019年とワールドカップで連覇を達成したにもかかわらず、2018年大会では、予選落ちした男子代表チームよりも賃金が低かったことを問題視してきた。
女子代表チームでは、元選手のホープ・ソロやカーリー・ロイドに加え、ミーガン・ラピノーやアレックス・モーガン、ベッキー・サワーブランといった現役選手が、2016年に米雇用機会均等委員会(EEOC)に苦情を申し立て、世界王者の女子代表チームに対して、米国サッカー連盟が男子代表よりもはるかに少ない賃金しか支払っていないと訴えた。
さらに、この苦情申し立てのあとも、男女同一賃金の実現に向けた動きが遅々として進まなかったことを受けて、2019年3月には、米国女子代表チームの選手28人が、賃金格差の是正と労働条件の改善を求めて、米国サッカー連盟を相手取った訴訟を起こした。
そして米国サッカー連盟は2022年2月、和解に合意。女子代表選手に対して2400万ドルを支払うとともに、将来的に男女同一賃金を実現すると誓約した。そのなかでは、女子代表チームと新たな労働協約を結ぶことが和解成立の条件とされていた。今回この協約が結ばれたことで、2月に合意した和解の手続きが完了する。