米労働統計局のデータによれば、医療業界では、2022年だけでも170万人近くが離職している。毎月の離職者数は、医療業界の労働力のほぼ3%に相当する。
さらに、医療従事者1000人を対象とした最近の調査では、28%が燃え尽き症候群を理由に離職していたことが明らかになった。
そうした大量離職は、現在や将来の人手不足の懸念を生むものだが、一方で、また別の疑問も提起している。そうした高いスキルを持つ労働者は、いったいどこへ向かうのだろうか?
離職した医療従事者の多くは、医療関係の別の職に就く。とはいえ、ときには境遇が大きく異なることもある。
医療人材プラットフォーム「ケアレブ(CareRev)」の創業者兼CEOのウィル・パターソン(Will Patterson)によれば、同社サービスを利用する看護師は、臨床現場で働く人たちに広がりつつあるトレンドを反映しているという。
「現代の労働者は、柔軟性の高さを期待しています。自分がいつ、誰のために仕事をするのか。それに関して、より大きな自由度を求めるようになっています」とパターソンは話す。「臨床現場の医療従事者も例外ではありません」
パターソンによれば、燃え尽きた医療従事者の多くは、医療に対する情熱を失ったわけではなく、自己決定権を高めてワークライフバランスを良くしたいと望んでいるだけだという。
ワークライフバランスの欠如は、在宅医療業界で理学療法の責任者を務めていた45歳のジル・ボーエン(Jill Bowen)が離職した理由でもある。ボーエンの仕事上の生産性は、実施した訪問件数で評価され、電話応答や書類作成、スケジュール調整に費やす時間などは度外視されていた。
「支払いや調整やもろもろの事務処理は、この仕事のうち、もっともストレスの大きい部分です」とボーエンは話す。「組織が、収益性やマーケティング上の約束、あるいは規則を守らないサービス提供者の要求に動かされていると、医療従事者はそれに従わざるをえなくなり、患者の治療に悪影響がおよびます」