医療業界の大量離職、燃え尽きた彼らが求めるのは柔軟な働き方

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ボーエンはいま、在宅医療事業者にサービスを提供するソフトウェア会社アクセス(Axxess)の実装コンサルタントとして働いている。そして、他の医療従事者たちに対しても、自分が転職に有利なスキルを持っていることを意識し、それを活用することを勧めている。

「医療分野で鍛えたスキルを持つ人が就ける職はたくさんあります」とボーエンは話す。「私たちには、他の職業分野で活かせるスキルがあるのです。たとえば、統率力とか、効率的なコミュニケーション力とか、チームプレイヤーとしての能力といったものです」

燃え尽きた医療従事者のなかには、自分の持つ有利なスキルを活かし、自らベンチャー企業を興す人もいる。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、34歳のジャッキー・タッセロ(Jackie Tassiello)にもキャリアの再考を促した。ニュージャージー州の正式な免許を持つアートセラピストであるタッセロは、パンデミック以前は、ニューヨーク=プレスビテリアン・コマンスキー小児病院の小児がん病棟でほぼ4年にわたって働いていた。1日に25人の子どもを担当しており、いずれもがん、血液疾患、消化器疾患を抱える子どもたちだったという。

パンデミックのあいだ、タッセロは配置換えになり、コロナ病棟の最前線で働く医療従事者の基本的なニーズに応え、感情面のサポートを提供していた。防護服を着たスタッフが、苦しむ患者に感応し、「これは自分だったかもしれない、私の愛する誰かだったかもしれない」と考えるのを目にしてきた、とタッセロは振り返る。

その体験は、タッセロ自身が優先順位を変えるきっかけになった。

「今をもっと大切にするために、仕事を減らそうと決めました。軌道修正して、疲れを癒すための休みも必要でした」

現在は、独立した心理療法士として活動しているタッセロは、医療従事者を失いたくないと願う医療機関に向けて、こう助言する。「病院に必要なのは、中核にある問題を解決することです。ギフトカードやランチでは解決しません」とタッセロは言う。「どれだけボーナスを出しても解決できない、構造的な問題があるのです」

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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