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2022.05.29 08:00

起業家に欠かせない、顧客や投資家を引き付けるためのスキルとは

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トム・ゴリサノは1970年、給与処理の業界で未開拓の市場を見つけた。同業界では当時、従業員数が50人以下の小企業にサービスを提供する価値はないという考えが一般的だった。ゴリサノは、手持ちの3000ドル(約37万円)を投じ、クレジットカードを限度額まで使い切って、小企業向けの給与処理サービス「ペイチェックス(Paychex)」を立ち上げた。

現在、米民間企業従業員の12人に1人は、ゴリサノの会社を通じ給与を受け取っている。事業が実を結ぶまでには何年もかかり、ゴリサノは最初の6年間は個人の給与を受け取らなかった。だがペイチェックスは現在までに、時価総額約400億ドル(約5兆円)以上の企業に成長した。

私は最近、ビデオ会議でゴリサノを取材し、彼の新著『The Italian Kid Did It』について話を聞いた。同書は、ゴリサノがニューヨーク州ロチェスターでイタリア人移民の息子として育ち、成功を勝ち取るまでをつづった回顧録だ。自伝であると同時に、起業のアイデアがある人に対する自己啓発書でもある。

ゴリサノはスペシャルオリンピックスなどの慈善活動に数億ドル(数百億円)を寄付しているほか、新興企業にも投資している。成功するアイデアを見極める上で特に重要なのは、創業者だという。

「事業を拡大する際は、騎手を信じる必要がある」とゴリサノ。「馬の乗りこなし方と勝つ方法を騎手が理解していなければ、馬がどれほど速く走れても意味はない」

ゴリサノが注目する起業家の資質としては、業界の知識、熱意、しっかりとした労働倫理、市場の大きな機会を特定する能力などがあるが、最も重要なのは「自分が作るものを売ることができるか」だ。「多くの起業家はこのわなにはまる。キャッシュフローに問題があると思い込むが、実際の問題は営業だ」

正式な肩書に「営業」がつかない起業家やビジネスリーダーの多くは、売り込みは「営業担当者」に任せるべきだと考えているが、実際には全員が営業を担っていることに気づいていない。
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編集=出田静

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