世界で誘拐される少数派の女性 政府による救出活動は進まず

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少数民族や宗教的少数派の女性や女の子を誘拐し、奴隷化する犯罪がますます大きな問題になっている。世界各国の法執行機関や政府は、こうした問題を無視し続けている状態だ。

女性や少女たちは必要な支援を受けることができず、有効な司法の力を活用できない。さらに女性らは、誘拐者らとの生活を強要されている。こうした問題に対してはほとんど、あるいは全く対策が講じられてこなかった。

イラクでは2014年8月、過激派組織「イスラム国(IS)」が数千人のヤジディ教徒の女性や子どもを誘拐した。こうした女性や子どもたちは数回売られ、何年にもわたり奴隷として扱われ虐待されてきた。現時点ではまだ、2700人以上が行方不明状態だ。

国連拷問禁止委員会は2022年5月、行方不明者の状況について言及した最終所見を作成し、イラクは「(ISに)いまだに捕らわれている被害者らを救出する取り組みを強化し、紛争に関連したあらゆる性的暴力行為を調査・訴追すべきだ」と主張した。

女性らが奴隷化されてから8年の間、被害者を取り戻す本格的な取り組みは行われてこなかった。それが今になって変わるとは考えにくい。

ナイジェリアでは、ボコ・ハラムやその他の類似組織が同国北部の学校で少女たちを誘拐してきた。ボコ・ハラムの少女や女性に対する性的暴力が初めて国際的な注目を浴びたのは、同テロ組織が2014年4月14日にボルノ州チボクの中等学校から276人の女の子たちを誘拐したときだ。女の子らは、大半が16〜18歳だった。

ボコ・ハラムの残虐行為は、チボクで誘拐された人数よりもはるかに多くの人に影響を与えてきた。同組織は、学校が欧米の価値観を教えているという考えに基づき学校を標的としていて、イスラム教徒が多い州で攻撃が行われている。誘拐された女の子の大多数はイスラム教徒だ。

しかし、ボコ・ハラムはキリスト教徒の女の子らも標的としてきた。同集団が誘拐したキリスト教徒の女の子らは強制的にイスラム教に改宗させられ、誘拐犯と結婚させられることもある。

誘拐された女の子の一人に、キリスト教徒のリア・シャリブがいる。彼女はわずか14歳だった2018年、ボコ・ハラムによりナイジェリア・ダプチの学校から誘拐された。誘拐された女子生徒の数は110人だった。

誘拐された女の子らの大半はこれまでに解放されたものの、ボコ・ハラムはリアの解放を拒み、彼女を奴隷として維持し続けている。他の女の子らの一人によると、リアがキリスト教の信仰を放棄することを拒否したことが理由だ。
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翻訳・編集=出田静

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