北朝鮮コロナ危機、異常に低い致死率の背景は?

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韓国の情報関係筋は「そもそも、金正恩は14日の会議で、建国以来の大動乱と指摘していた。本当に好転したのであれば、金正恩が見通しを誤ったことになる。死亡者数が少ないのは、住民の不安を取り除くための宣伝ではないか」と語る。同筋によれば、北朝鮮は従来から、食糧の収穫量を実際より多く発表したり、経済計画の成果を誇大に宣伝したりしていた。韓国政府は、北朝鮮が主張する政治スローガンはともかく、発表する統計や数値については政治的な思惑や計算が含まれているとみて、「北朝鮮は常にだますという認識で分析する」(同筋)という。

韓国政府関係者の1人は「地方の各部門が、中央の怒りを買わないように死者の数を操作して中央に報告しているのではないか」と語る。朝鮮中央通信によれば、12日の党政治局会議で「敏感に対応できなかった防疫部門の無警戒と気の緩み、無責任と無能が批判された」という。同関係者は「金正恩の指示に従って、防疫措置の成果を上げなければ、自分の身が危ういと地方の幹部が考えている可能性がある」と語る。

北朝鮮の保健医療事情に詳しい韓国の安景洙統一医療研究センター長も、北朝鮮の発表する新型コロナに関係する数値について「保健医療衛生学的に疑問点が多い。北朝鮮にとって保健医療は、もっとも政治的案領域だ。北朝鮮当局のコロナに関する言及について、保健医療の視点でだけ分析してはいけない。コロナが拡散しているという点だけがファクト。コロナへの対応は、防疫と政治的な統制が結びついている」と語る。そのうえで「発熱者には新型コロナ感染者以外の人もいるし、オミクロン株は致死率が低い。北朝鮮でも高齢者や基礎疾患者を中心に死亡する人が出ているだろう。死亡者数は、北朝鮮の発表した数値よりも、もう少し多いのではないか」と語る。

朝鮮中央テレビは18日、前日に開かれた党政治局常務委重要会議の様子を放映した。金正恩氏は最初からマスクを着けていなかった。マスク姿の幹部たちも最後は皆、マスクを外した。会議では、コロナを巡る状況が「好転して推移している」という認識が示されたという。韓国政府関係者の1人は「防疫対策をしっかり取るなら、最後までマスクをしないとだめ。北朝鮮では結局、防疫よりも政治が大切だということだ」と語った。

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文=牧野愛博

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