ビジネス

2022.05.26 14:30

43カ国の学生がビジネスに挑戦 日本代表が体験した「世界への道」

守屋 美佳


学生ふたりがプロダクトデザイナーに発注してつくり上げた、プライベートな音響空間を発生させる装置のモックアップ。 将来的な実際の利用を考慮してUSB充電ポートも取りつけた。(c)Suguru Saito / Red Bull Content Pool

並行して、モックアップを北原に紹介してもらったプロのプロダクトデザイナーに発注。プレゼンテーションのスライドに挿入する画像も美しくわかりやすいものをと音響アーティストに依頼してつくり込む。英語でのプレゼンテーションで話す内容も、馬渕の指導のもと何度も修正を重ねながら練習を繰り返した。イントネーションや表情、スピードの強弱まで練りに練った。そして彼らは馬渕から「いままでの常識が変わる時代。いま世界を感じられることはまたとないチャンス。体験をもち帰ってほしい」とはなむけの言葉を受け、決戦の舞台トルコへたつ。

3日間のグローバルファイナルで世界各国の代表と会い、ワークショップやパーティで交流を重ねるなかで、副田は「ぶっちゃけライバルはいない」と感じていた。

「馬渕さん、北原さんの指導を受けて、自分たちはジャッジが言う通りのポイントを押さえたスライドをつくれていたし、プロトタイプまで準備できているチームも少なかったけれど、僕らはPSZの実際に動くものまで用意できていたし」

最終日のプレゼンテーションではセミファイナルで10チームまで絞り、上位3チームがファイナルへ進出。「準備していた通りのプレゼンができた」というNCMSは上位10チームに選ばれたが、ファイナルの3チームには入ることができなかった。副田はトップ3との差をこう振り返る。

「プロダクトの魅力を伝えるうまさを感じました。トップ3に入ったチームは、自分たちのプロダクトがなければ世界は変わらない、というくらいのテンションで話していた。そこが自分たちとの差でした」

それでもふたりは口を揃えて「グローバルファイナルは楽しかった」と語る。自分たちのアイデアが世界に通用することを確かめられた喜び、そして各国代表チームが自分たちを含めてどんどんコミュニケーションを取る様子や自信に満ちた話しぶりに、自分の常識の殻が壊される衝撃を受けた。


3日間にわたるGlobal Finalのプログラム中にはワークショップだけでなく世界各国の代表チームとの交流の機会も。笠井は日本のアニメが好きなインドのチームと、副田幸暉は同じ理系のイタリアチームと特に親交を深めた。(c)Nuri Yilmazer / Red Bull Content Pool

「次の夏にはシチリアで集まろうぜ、って話もあって、そこでまた彼らと会えるのを楽しみにしています」と副田が話せば、最終日に胴上げされるほどの人気者になった笠井は言う。「Red Bull Basementにエントリーするときには結果が出なかったらばかにされる怖さも感じていましたが、実際、世界への扉が開くという素晴らしい体験をできました。今後はビジネスを学んで、また挑戦していきたい」。

文=青山鼓

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