「生涯越境学習」という提案
──個人のキャリアの考え方にも有効だ。「内なる多様性」は、自らを変化させることにつながる。キャリア教育では「やりたいことが大事だ」というが、固定化した「やりたいこと」「あるべき姿」ではなく、自分がワクワクする価値観を、その時々で、さまざまな経験を積みながら変えていけばいい。(変化に応じて柔軟にキャリア形成を行う)プロティアンキャリアなどもその一例だろう。
また、コロナ禍で生まれたリモート副業など、キャリアの選択肢も多様化し、成功の「ものさし」も人によって異なる。越境はそうした「ものさし」がさまざまだと気づく機会にもなる。
私は「生涯越境学習」を提案する。越境というと、修羅場にいかなければいけないと思うかもしれないが、そうではない。アウェイのため不安な気持ちがありつつも、漫画『ONE PIECE』のようなワクワクする、楽しい冒険をする感覚のほうが近いのではないか。生涯越境学習とは「生涯修羅場」ではなく、「生涯冒険をし続けよう」という意味だ。
いしやま・のぶたか◎法政大学大学院政策創造研究科教授。一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程終了、博士。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。