紹介した小説が続々と重版になる「TikTok売れ」が話題になったり、2021年末には「今年読んで最も面白かった本」を選ぶ「けんご大賞」を実施したりと、出版界への影響力も大きい。
今春、けんごは小説家としての活動もスタートした。4月28日にデビュー作となる恋愛小説『ワカレ花』(双葉社)を上梓。すでに3万部を突破するベストセラーとなり、大きな反響を得ている。
野球少年だった彼はなぜTikTokerになり、さらには小説家としてデビューするに至ったのか。その根底には「小説の魅力をより多くの人に伝えたい」という想いがあった。
読書は“コスパのいい趣味” ?
けんごは、小学校3年生から野球を始め、大学まで野球漬けの人生を歩んできた。初めて小説を読んだのは、大学1年生のときのこと。初めて時間的にも精神的にもゆとりができたことで、「趣味を探そう」と思い立ったことがきっかけだった。
趣味は、何でもよかった。ただ、金銭的な余裕はなかったため、コスパの良さを求めた結果、小説にたどり着いたのだという。
「映画館で映画を見ようと思うと2時間で2000円弱かかりますよね。当時の僕からするとそれはとても高く、それよりも安価で何時間も没頭できる小説に魅力を感じました」
初めて買った小説は東野圭吾の推理小説『白夜行』(集英社文庫)。860ページもある大作だ。
「書店に並んでいるのを発見して『この分厚さなら、とんでもない時間を潰そうだ』と思って手に取りました」
それをきっかけに小説の魅力にはまっていき、推理小説や青春小説のベストセラー作品や、宮部みゆきや伊坂幸太郎といった人気作家の作品など、書店で目についたものからどんどん読んでいった。
Tik Tokに動画を投稿し始めたのは、2年前の大学4年生の秋のこと。就職先は決まっていたが、夏に参加した内定者研修で、「違うな」と感じてその場で内定を辞退。その後の進路を考えながら、「自分の好きな小説を紹介したい」と思い、TikTokを始めた。
「インスタやTwitter、You Tubeでも小説紹介をしている方は多いですが、基本的にはフォローしてくれた人のタイムラインに流れる仕組みなので、小説にまったく興味のない人には届きにくい。一方で、TikTokはそれよりも『おすすめ』に表示されるコンテンツを楽しむSNS。これなら多くの人に届くかもしれないと思いました」