生活費が増えている主な要因は、価格の変動が大きい食品とエネルギーだ。特にエネルギーは、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの経済制裁による供給不足の影響が大きい。
食品価格については、「ハンバーガー」を例に考えてみたい。今年4月の主な材料の小売価格(都市部)はそれぞれ、1年前と比べて以下のように変化していた。値上がり幅が最も大きかったのは、肉類となっている。
ハンバーガーの値段はどう変化した?
・バンズ:+10.1%
・レタス:+12.7%
・トマト:+0.4%
・ベーコン:+17.7%
・牛ひき肉:+14.8%
・ソース類:+9.2%
(出所:米労働統計局)
世界のサプライチェーンが依然としてパンデミックによる混乱に苦しむなか、各国は昨年以降、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために実施していた都市封鎖(ロックダウン)などの行動規制を緩和。消費者の間では、「リベンジ消費」と呼ばれる消費行動もみられ始めた。インフレ率はそうしたなかで上昇し始めたが、肉類はその時点ですでに、コスト上昇の影響が最も大きい食品のひとつとなっていた。
それ以後、物価上昇圧力は食品やアルコール飲料、家賃をはじめ、より幅広いカテゴリーにおいて強まっている。中古車・トラックの価格は昨年中にすでに高騰していたが、新車の価格も、1年前と比べて13%高くなっている。
ただ、あらゆるものが値上がりするなかでも、まだ例外はあるとみられる。トマトの値段は0.4%の上昇にとどまっており、それほど変わっていない。生鮮野菜全般も、食品カテゴリーのなかでは最も低い6.2%の値上がりになっている。
インフレは「ほぼ」世界的
米国以外の先進国も、インフレに悩まされている。経済協力開発機構(OECD)によると、インフレ率はドイツが7.4%(4月)、英国が6.2%(3月、入手可能な最新の統計)となっている。
例外といえる日本は、3月の物価上昇率がわずか1.2%だった。価格の上昇がニュースになる日本は値上げをひどく嫌う傾向にあり、現在のように経済が世界的に混乱するなかでも、企業は値上げを避けようとしてきた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、階層化された日本の労働市場と企業が行ってきたのは、投資ではなく貯金だ。それは、日本のエコノミストたちをいら立たせてきた。だが、低成長を容認する日本のアプローチは、少なくとも現在のような状況においては、都合がよかったということになる。
日本は、欧米が実施している対ロシア制裁に全面的に加わっているわけではない。だが、それでもウクライナで続く戦争の影響は、日本の消費者物価にも表れ始めている。